研究課題
前立腺癌の浸潤・転移メカニズムは明らかにされておらず、効果的治療を行う上で浸潤・転移制御を担う鍵因子の同定は必須であると考えられる。本研究では、前立腺癌転移モデルショウジョウバエを用いたスクリーニングにより見出した二つの浸潤促進因子(CNPY2・MEP1A)を介した前立腺癌細胞の浸潤・転移メカニズムの解明を目指す。前年度までの研究により、CNPY2の作用機序の一つとして前立腺癌増悪の鍵因子であるアンドロン受容体(AR)のタンパク量制御メカニズムを見出した。CNPY2はE3ユビキチン化酵素MYLIPとE2ユビキチン酵素UBE2D1の相互作用を阻害することで、MYLIPによるARのポリユビキチン化を抑制した。CNPY2によるARのポリユビキチン化抑制はユビキチン-プロテアソーム系を介したARのタンパク分解を阻害し、結果的にARタンパクの蓄積を誘導すると考えられる。前立腺癌患者検体においてCNPY2とARの発現量に正の相関が認められたことから、CNPY2はARタンパク分解抑制を介して前立腺癌の増悪促進を担うことが示唆された。当該年度は、CNPY2の作用機序のさらなる解明を目的とし、CNPY2と相互作用する因子の網羅的探索を試みた。樹立したflagタグ融合CNPY2安定発現細胞株の細胞質画分を用いてflag抗体による精製の後、サイズ分画し、MS解析により相互作用因子の同定を行った。その結果、CNPY2は数種のヒートショックプロテインと相互作用することを見出し、タンパク質フォールディングに関与する可能性が示唆された。今後、CNPY2がヒートショックプロテインに対してどのように作用するのかを明確にすることで、癌細胞におけるタンパク質の量的・質的管理メカニズムの一端を解明できると考えられる。その成果は、がんに対する新たな治療法の開発に繋がると期待される。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)
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