本研究の目的は、尿路結石の形成・消失過程におけるオンコスタチンM(OSM)の役割を明らかにすることである。 一昨年度の実験で、野生型マウス(C57BL/6J)を用いた結石モデルにおけるOSMおよびOSM receprorβ(OSMRβ)の遺伝子発現に関する検討、およびOSMRβ遺伝子欠損マウス(OSMRβ-/-マウス)を用いた結石にモデルにおけるコントロールマウス(OSMRβ+/+マウス)との比較検討を行ったところ、野生型マウスを用いた結石モデルにおいては結晶沈着量の増加に伴ってOSMおよびOSMRβの発現が増加すること、OSMRβ-/-マウスにおいてはコントロールマウスと比較して、結晶沈着量が有意に抑制されることが明らかとなり、OSMが尿路結石の形成過程において、何らかの形成促進作用を有していることが示唆された。さらに、昨年度の実験で、OSMRβが野生型マウスを用いた結石形成モデルにおいて尿細管上皮および間質の線維芽細胞に発現していること、コントロールマウスに比べてOSMRβ-/-マウスでTNF-αなどの炎症性サイトカインやOPN、ANX2といったcrystal binding protein関連遺伝子の発現が有意に減少していることが明らかとなった。 本年度の実験では、結石モデルマウスからOSMRβが発現している尿細管上皮および間質線維芽細胞を分取・培養し、OSM刺激により、TNF-αなどの炎症性サイトカインが上昇していることを確認した。 現在のところ、尿路結石形成の明確な機序は明らかになっておらず、治療も外科的治療に頼らざるをえないのが現状である。本研究の成果は、分子細胞生物学的エビデンスに立脚した新規の尿路結石治療薬の開発につながる第一歩となる可能性があると考えている。
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