研究実績の概要 |
近年CRPCの新規治療薬が登場したが、いずれ抵抗性を獲得した前立腺癌が出現しうる為、既存の薬剤と異なる標的を持つ薬剤による治療戦略の確立は急務である。請者は、抗がん剤耐性獲得メカニズム解明のため、タキサン系抗癌剤カバジタキセル(CBZ)耐性前立腺がん細胞株を作成した。転移性CRPCモデル細胞株であるDU145へCBZを2年間にわたり投与したDU145CRにおいて、CBZに対する感受性の低下を認めた。DU145CRの遺伝子発現プロファイルを解析した結果、EMT関連因子であるZEBファミリー、SNAIファミリー、TWISTファミリーの発現亢進を認めた。EMTがカバジタキセル耐性に関わる可能性が示唆されたが、臨床上使用可能なEMT阻害剤は存在しないため、臨床応用への障壁が高いと考えられた。 申請者は、Broad InstituteのConnectivity Mapを応用した独自の薬剤スクリーニングにより、CBZ耐性前立腺癌細胞株の遺伝子発現プロファイルを、CBZ感受性前立腺癌のプロファイルへ逆転させる候補薬剤を探索した結果、ヒト臨床使用可能な既存薬Drug A001-007が候補薬としてリストアップされていた。このうち、Drug A003はCBZ耐性細胞株においてin vitro,で抗腫瘍効果を発揮し、CBZ耐性細胞株のEMT関連因子の発現を抑制した(特許出願済)。さらにCBZ耐性細胞株をヌードマウスの皮下に移植し、Drug A003を経口投与した。Drug A003は単剤で皮下腫瘍増大を抑制し、さらにCBZとの相乗効果も有していた。 Drug A003はEMT関連因子を標的としたCBZ耐性克服薬剤として有望であり、メカニズム解析を進めた上で臨床試験を計画している。
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