研究課題/領域番号 |
17K16825
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
三浦 広志 秋田大学, 医学部, 助教 (80375302)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 早産予知 / 呼気水素ガス測定 / 腸管内細菌 |
研究実績の概要 |
本研究は、早産群、早産徴候のみ群と対照群に分けた妊娠女性の、腸管内水素細菌数とその水素産生能を調べ、さらに呼気中水素濃度から3群間の体内水素濃度の違いを検討するものである。研究に先立って、本研究の主旨を病院内倫理委員会に諮り承認を得た。 はじめに呼気水素濃度と血中水素濃度の両者が相関することを明らかにするべく、妊婦の呼気中と静脈血中水素ガス濃度を、ガスクロマトグラフィーにて評価した。呼気水素ガスは容易に再現性良く測定できたが、末梢血中水素ガスは濃度が低く測定が困難であった。妊娠女性に水素負荷することは安全性の問題があるため、同意の得られた非妊娠女性数名に飽和水素水を経口投与して測定したところ、呼気水素濃度と血中水素濃度の両者が相関することが分かった。 次に、呼気水素ガスを簡便に評価する方法としての携帯型呼気水素ガス測定器の精度を検証した。食後の妊婦の呼気水素ガスを、携帯型測定器とガスクロマトグラフィーの両者で経時的に評価した。両者に相関がみられることは確認できたが、比較的高濃度の呼気水素となるとバラつきが見られるため、現在、精度を高める検証を行っている。 上記と並行して、切迫早産妊婦の便培養を行い、水素産生する細菌コロニーの選別を試みた。市販の水素感知膜をディッシュの上に置き、水素感知を試みたが、感知膜が水分により剥離してしまうため、設置において適切な方法がないか検証中である。もしも困難な場合は、計画書に示した代替案で対応する予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下のように、実施計画に挙げた内容の課題は概ね達成されたと考えた。 研究実施計画に従った内容で、患者の同意を得る方法および同意文書を病院内倫理委員会に諮り承認を得た。平成29年度中に実施を予定していた、切迫早産妊婦の便培養を行い水素産生する細菌コロニーの選別を試みた。市販の水素感知膜をディッシュの上に置き、水素感知を試みたが、感知膜が水分により剥離してしまうため、設置において適切な条件を検討している。 そこで、平成30年度に実施予定の、呼気水素濃度と血中水素濃度の両者が相関することを前倒しして実施した。妊婦の呼気中と静脈血中水素ガス濃度を、ガスクロマトグラフィーにて評価した。腸管内に便が少なく発酵が進まない時間帯に、のべ20例の妊婦から呼気を採取し測定したところ、平均11.8ppm(range 1-15)の水素ガスが含まれることが分かった。同時に採血した末梢血中水素ガスは、採取環境(病院内の室内)とほぼ同じであるほど低濃度であるため、検出が困難であった。血中濃度を高めた状態で、呼気と血中の水素ガス濃度を測定し相関を見ることとしたが、妊娠女性に水素負荷することは安全性の問題があるため、同意の得られた非妊娠女性5名に飽和水素水を経口投与して測定した。水素負荷後の呼気水素濃度と血中水素濃度の両者が相関することが分かった。 次に、呼気水素ガスを簡便に評価する方法としての携帯型呼気水素ガス測定器の精度を検証した。食後の妊婦の呼気水素ガスを、携帯型測定器とガスクロマトグラフィーの両者で経時的に評価した。両者に相関がみられることは確認できたが、比較的高濃度(100ppm以上)の呼気水素となるとバラつきが見られるため、現在、希釈しての測定など、精度を高める検証を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度も引き続き、妊婦の便培養を行い水素産生する細菌コロニーの選別を試みる予定としている。水素感知膜が使用に適さないと判断された場合、①Seibertら(1998)が報告した水素センサ膜を作成する。この膜は、培養ディッシュ上という湿環境での使用報告が多数あり、感度良く水素にて直接青色に呈色するため観察が容易である。②細菌の16S-rRNA 領域を増幅するPCR(T-RFLP法)を行い、現段階で特定されている水素産生菌に限定して腸管内細菌の分布の違いを調べる。③密閉容器にて培養し、容器内ガスを呼気水素分析器へ通し水素ガス濃度を直接測定する。 これと並行して、定期的に早産群/早産徴候のみ群/対照群の呼気水素濃度測定を施行し、呼気水素濃度や経時的変化が早産マーカーとなりうるか調べる。もしも被験者間で食事背景に差が大きい場合には、早朝空腹時の呼気水素ガス測定や、被検者に同一内容の食事を摂取させた後に測定を行うなど条件を統一する。また、日本人は乳糖負荷で呼気中水素ガス上昇がみられるため(近藤ら,2001)、乳糖負荷前後での呼気水素ガス上昇を観察して、体内の水素産性能を評価することも可能である。乳糖に限らず、フルトオリゴ糖やラクチュロースを負荷しても水素産生がなされる。特に後者は処方薬として本邦で製品化されており、海外では妊婦の緩下剤として使用されており安全と考えられる。 研究成果が得られたら、学会発表と論文投稿を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)平成29年度においては,研究課題で得られた成果の発表を目的として,学会発表を国内2件程度を予定し,その諸費用と論文投稿のために研究費を使用する予定であった.しかし、呼気水素ガス測定や便培養の水素ガス産生菌同定の基礎的な検証がメインとなったこと、早産症例の蓄積が十分で無いと判断し症例収集を主に行ったため支出が抑えられた。結果、予定より研究費の支出がおさえられたため研究費の次年度繰越に至った. (使用計画)昨年に引き続き、呼気水素ガス測定の精度向上のためのガスクロマトグラフィー使用、便培養による水素ガス産生菌同定を行っていく。そのためのガスクロマトグラフィーレンタル費、水素感知膜購入費、便培養にかかわる物品購入費、解析用のPC購入費、学内発表と論文投稿費を使用する予定としている。
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