PIK3CA遺伝子変異を有することが知られているヒト子宮頸癌細胞株CaSkiを使用して、分子標的薬によるPI3K/Akt経路の阻害による効果を調べた。CaSki細胞を用い、細胞増殖を調べ、シスプラチンとPI3K阻害薬であるcopanlisibをそれぞれ投与し、シスプラチンとcopanlisib併用の効果について調べた。Cell viability assayを行い、シスプラチン単剤とcopanlisib単剤と、それぞれの併用で50%阻害濃度を測定したところ、併用することで相乗効果を認めた。シスプラチン毎週投与併用化学放射線療法(CCRT)を施行した進行期IIB~IVA期の子宮頸癌患者59名において、治療前の生検腫瘍検体のパラフィンブロックからDNAを抽出し、同様にPIK3CA遺伝子変異を解析したところ、7名(12%)に変異を認めたことを、昨年までに示しており、予後についてPIK3CA遺伝子変異は全生存および癌特異的生存に関して、有意な予後不良因子であったことを示した。PIK3CA遺伝子変異によるPI3K/Akt経路の活性化のために放射線感受性およびシスプラチン感受性が減少し、CCRTの効果が減弱し予後が不良となるのであれば、分子標的薬によりPI3K/Akt経路を阻害すれば、進行子宮頸癌の予後を改善できる可能性がある。今年度は分子標的薬によりPI3K/Aktシグナル経路をブロックすることにより、PIK3CA遺伝子変異を有する子宮頸癌においてCCRTの効果を増強し、予後を改善できる可能性について示した。
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