研究課題/領域番号 |
17K16829
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
志鎌 あゆみ 筑波大学, 医学医療系, 講師 (40778627)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 子宮内膜癌 / 腫瘍微小環境 / 免疫チェックポイント機構 |
研究実績の概要 |
私たちは子宮内膜癌において、腫瘍微小環境と予後との関連性を明らかにすることとした。221例の子宮内膜癌の手術検体において、腫瘍微小環境のバイオマーカーであるPD-L1、CD8、CD68、VEGFの免疫組織化学的染色にて、その蛋白発現の評価を行い、腫瘍微小環境プロファイルと予後との関連性を統計学的に解析した。腫瘍細胞におけるPD-L1の高発現は、良好な全生存期間と相関する傾向であった。腫瘍細胞周囲におけるPD-L1の高発現は、CD8陽性腫瘍浸潤性リンパ球数、CD68陽性腫瘍関連マクロファージ数、マイクロサテライト不安定性と有意な関連性を示した。 腫瘍細胞周囲におけるPDL1の高発現は、より短い無治療期間である傾向を示した。全生存期間に関する単変量解析では、腫瘍細胞におけるPD-L1の高発現が予後良好因子、腫瘍細胞周囲におけるPD-L1の高発現、高齢、進行癌、非類内膜腺癌、深い筋層浸潤および脈管侵襲陽性が予後不良因子であった。全生存期間の有意な予後因子で行った多変量解析では、腫瘍細胞におけるPD-L1の高発現、高齢、進行期、非類内膜腺癌、および脈管侵襲陽性が独立した有意な予後因子であった。PD-L1を介した免疫チェックポイント機構が、子宮内膜癌における腫瘍微小環境の調節に関与し、その予後に影響を及ぼす可能性が示唆された。子宮体癌手術検体の腫瘍組織において、ヘルパーT細胞のマーカーであるCD4についての解析を追加した。高密度のCD4陽性腫瘍周囲免疫細胞は、全生存期間に関する予後因子の単変量・多変量解析において、有意で独立した予後良好因子であることがわかった。更に、高密度のCD4陽性腫瘍周囲免疫細胞は、より長い無治療期間(Treatment-free interval)と有意に関連することがわかった。従って、腫瘍組織におけるCD4陽性ヘルパーT細胞の高密度の存在は、化学療法感受性を増強することにより、予後良好因子となっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
子宮内膜癌における腫瘍微小環境プロファイルと臨床病理学的因子や予後との関連性についての検討結果を論文化し、投稿中である。手術検体から抽出したDNAやRNAの解析がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍微小環境におけるCD4を含めた各因子の相互作用についても、解析を進めてゆく予定である。また、各症例手術検体のパラフィン包埋 ブロックから腫瘍および辺縁組織のそれぞれからDNA・RNAを抽出する。抽出した腫瘍組織DNAを使用して次世代シークエンサーによる解析を行い、遺伝子変異の網羅的解析から各症例において同定された遺伝子変異の数と、MSI、MMR不全および腫瘍微小環境プロファイルとの関連性を統計学的に検討する。 子宮内膜癌手術検体のパラフィン包埋ブロックから、腫瘍とその辺縁組織のそれぞれにつきマイクロダイセクションによりtotal RNAを抽出したのち、Cy3でラベルしたcDNAを合成し、マイクロアレイにハイブリダイゼイションさせ、遺伝子発現レベルを網羅的に解析する。まず腫瘍およびその辺縁組織それぞれに関して、免疫染色による腫瘍微小環境発現プロファイルの蛋白レベルでの結果と、マイクロアレイ解析による転写レベルでの結果との間 の相関性を調べ、既に得られた腫瘍微小環境発現プロファイル・データの強化を図る。次にマイクロアレイ・データを使用し、HeatmapからClustering解析、さらにGene Ontology解析、Pathway解析を行い、腫瘍微小環境プ ロファイルにおいて治療反応性・予後などと統計学的に有意な関連性の認められた分子とその関連分子に関し、腫瘍微小環境プロファイルが治療反応性・予後に関与するその詳細な分子機序の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況がやや遅延しているため、次年度使用額が生じた。 また、引き続き各症例手術検体のパラフィン包埋ブロックから腫瘍および辺縁組織のそれぞれからDNA・RNAを抽出し、抽出した腫瘍組織DNAを使用して次世代シークエンサーによる解析を行う予定である。
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