研究課題/領域番号 |
17K16831
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
佐藤 明日香 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (60779859)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 胞状奇胎 / 侵入奇胎 / ABO血液型 / 血液型不適合 |
研究実績の概要 |
全胞状奇胎は、妊娠終了後に約20%で侵入奇胎を続発する。奇胎絨毛組織は、患者にとって遺伝学的に非自己であるが、侵入奇胎患者の体内では存続できるので、侵入奇胎発症例では、免疫学的拒絶を回避する機構が存在すると考えられる。 申請者らの154例の雄核発生奇胎(全奇胎)の検討では、血液型がO型の患者で侵入奇胎発症頻度が低く、AB型で発症頻度が高かった。本研究は、「奇胎組織-患者間のABO血液型適合性が侵入奇胎発症を規定している」との仮説の検証を目的とする。ABO血液型不適合による拒絶反応が侵入奇胎発症を妨げるのであれば、奇胎絨毛組織ABO血液型と患者血液型の比較によって侵入奇胎発症患者を予測できる可能性がある。
本年度は、胞状奇胎組織と患者血液のABO血液型ジェノタイプ同定を行い、奇胎組織-患者間のABO血液型適合性と侵入奇胎発症の関連について検討した。 過去10年間に当施設でDNA診断を行った胞状奇胎のうち、遺伝学的に雄核発生と確認された全胞状奇胎の症例を対象とした。対象症例の胞状奇胎組織と患者血液を用い、リアルタイムPCRを用いた高解像度融解曲線分析(high resolution melting (HRM) analysis)により、ABO血液型を規定するSNPの解析を行った。HRM法によって決定した患者血液のABO血液型ジェノタイプは、表試験裏試験で判定された血液型とvalidationを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りの進捗状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度に実施した研究の結果、胞状奇胎組織‐患者間のABO血液型適合性と侵入奇胎発症には相関を認めなかった。これは当初の仮説と異なる結果であるが、その原因として抗体価の関与を考えた。 抗A抗体、抗B抗体の抗体価は個人差があることが知られている。そこで、ABO血液型不適合の症例であっても、抗体価が低い患者は免疫学的拒絶反応が弱く、侵入奇胎を発症しやすいのではないかと考えた。 今後はまず、奇胎組織‐患者間でABO血液型不適合であった症例について、患者血清を用いて抗A抗体、抗B抗体の抗体価を測定する予定である。侵入奇胎発症例で抗体価が低いことが示されれば、仮説「奇胎組織-患者間のABO血液型適合性が侵入奇胎発症を規定している」が支持されるため、当初の計画通り、患者血液中を循環する絨毛細胞でのABO血液型抗原の発現確認を進めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度は、実験に必要な消耗品購入、学会発表の旅費、論文発表のための校正費等に使用する予定である。
|