平成30年度は、前年度に同定した胞状奇胎組織と患者血液のABO血液型ジェノタイプについて、胞状奇胎組織-患者間の血液型適合性を判定し、その後の侵入奇胎発症有無との関連を統計学的に解析した。胞状奇胎組織-患者間のABO血液型適合性は、適合 95例(73.6%)、不適合 34例(26.4%)であった。続発症発生率は、適合症例 18/95(19.0%)、不適合症例 4/34(11.8%)であり、有意差を認めなかった(Fisher片側検定 p=0.251)。 さらに、ABO血液型不適合であった症例のうち6例について、ABO抗原に対する抗体価を調べ、侵入奇胎発症との関連を検討した。抗体価は、続発症を発症した症例と自然寛解した症例のいずれも、2倍以下から256倍以上までのばらつきを認め、有意な傾向を認めなかった。 平成29年度に実施した研究では、患者血液型別の侵入奇胎発症率は、A型 14.8%、B型 22.2%、AB型 36.4%、O型 10.8%であり、A型抗原・B型抗原を有する患者で侵入奇胎の発症率が高い傾向にあった。しかしながら、平成30年度の検討により、ABO血液型の適合性およびABO抗原に対する抗体価は、侵入奇胎発症と関連していないことが分かった。本研究は、胞状奇胎組織のABO血液型を同定した初めての研究であり、血液型と侵入奇胎発症の関連が免疫学的拒絶反応によるものではないことを初めて示した。この知見をふまえ、更なる侵入奇胎発症の病態解明が期待される。
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