研究課題/領域番号 |
17K16832
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
樫山 智子 東京大学, 医学部附属病院, 登録研究員 (70755719)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 分子標的薬 / アポトーシス / 婦人科悪性腫瘍 / Bcl-2 family |
研究実績の概要 |
卵巣癌は抗癌剤耐性を獲得し再発を繰り返す難治性の悪性腫瘍であり、殺細胞効果を高める新規治療ターゲットの解明が求められている。また、子宮体癌は再発時の抗癌剤の選択肢が限られており、新規の治療戦略が求められている。我々は、卵巣癌や子宮体癌といった婦人科悪性腫瘍においてアポトーシスに関連するBcl-2 familyを標的としてアポトーシスを効率的に誘導する新規治療法を確立することを目的として研究を開始した。はじめに、子宮体癌細胞株6株と卵巣癌細胞株11株(明細胞癌6株、粘液性癌5株)を用い、BH3模倣薬(Bcl-2 familyを標的とした治療薬)であるABT737及びABT199を添加し、細胞増殖抑制効果について検討した。Cell proliferation assayを行い、子宮体癌細胞株では、ABT737、ABT199共に50μMの添加でコントロールと比較して7割以上細胞増殖を抑制した。卵巣癌細胞株では、10μMで7割以上の細胞増殖抑制を示した。卵巣癌細胞株2種類を用いて、ABT737を添加した際の細胞周期に与える影響を検討した。ABT737は濃度依存的にsub-G1期細胞の割合を減少させ、アポトーシスを誘導する可能性が示唆された。続いて、細胞株を用いてBH3模倣薬と他の薬剤を併用することでこのアポトーシスをより効率的に誘導できるかについて検討するため、抗癌剤としてパクリタキセル、分子標的薬としてPI3K/mTOR同時阻害薬を候補とし、ABT737との併用が細胞増殖抑制に与える影響を検討した。パクリタキセルとの併用では、併用による相乗効果は認められなかったが、PI3K/mTOR同時阻害剤であるDS7423との併用では、相乗効果が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞株維持においてトラブルが発生したため。また薬剤添加濃度の調整のための予備実験に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
①相乗効果を認めたPI3K/mTOR阻害剤とBH3模倣薬の併用において、アポトーシス誘導率が上昇したかについて検討する。②細胞株を用い、他の薬剤(プラチナ製剤やMEK阻害剤、MDM2阻害剤)などとの併用によりアポトーシス誘導において相乗効果が認められないかを検討する。③BH3模倣薬単剤及びその他の薬剤との併用において、効果を予測するバイオマーカーの有無について検討する(Bcl-2 familyタンパクの発現や遺伝子異常など)。④ ①および②の結果から有望と考えられた薬剤投与法において、ヌードマウスなどを用い、③で明らかとなったバイオマーカーの有無の条件下でその有効性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の遅れに伴い、薬品などの物品購入費が予定よりも減少したため。余剰分は現在計画している来年度の研究において来年度分の助成金と合わせ、主に物品購入費として使用する予定。
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