研究実績の概要 |
卵巣癌は抗癌剤耐性を獲得し再発を繰り返す難治性の悪性腫瘍であり新規治療ターゲットの解明が求められている。我々は、卵巣癌を含む婦人科悪性腫瘍においてアポトーシスと関連するBcl-2 familyを標的として、卵巣がん及び子宮体癌の細胞株を用いてBH3模倣薬ABT737及びABT199の抗腫瘍効果を証明した。続いて、卵巣明細胞癌では、アポトーシスに関わる分子であるMDM2の高発現、TP53の低変異率、PI3K/mTOR経路の高頻度活性化などから、新規MDM2阻害剤DS-3032bとEverolimusの併用も新規治療の選択肢となり得ると考えた。卵巣明細胞腺癌株および淡明細胞型腎細胞癌株に対するMDM2阻害剤(DS-3032b)、mTOR阻害剤(Everolimus)の細胞増殖抑制効果をMTT assayおよびFlow cytometryを用いて解析し、Western blottingによりタンパク発現の変化を確認した。また、ヌードマウス皮下移植モデルを作成し、薬剤経口投与(DS-3032b 50 mg/kg/day, Everolimus 5mg/kg/day)による抗腫瘍効果の検討を行った。EverolimusはTP53非依存的に静細胞性の細胞増殖抑制効果を認めたが、DS-3032bは野生型TP53細胞株においてのみ濃度依存性に細胞増殖抑制およびアポトーシス誘導効果を認めた。Wetern blotingでは、DS-3032bによるアポトーシス関連蛋白の誘導、EverolimusによるmTOR下流蛋白の抑制を確認した。 DS-3032bとEvelolimus併用によりヌードマウス皮下移植モデルでは、単剤と比較して有意な細胞増殖抑制効果の増強を認めた。以上の結果より、DS-3032bが野生型TP53卵巣および腎明細胞腺癌における新規分子標的治療薬となり得る可能性が示唆された。
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