研究課題/領域番号 |
17K16833
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金谷 真由子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60748862)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プロゲステロン / 黄体ホルモン / RB / マウスモデル / 子宮内膜上皮 / 細胞増殖 / 子宮体癌 / 着床 |
研究実績の概要 |
子宮体癌のプロゲステロン(P4)抵抗性を考える上では、子宮内膜に対する黄体ホルモンの作用の検討は極めて有用である。P4作用により着床直前に子宮内膜上皮増殖停止と間質の増殖開始が起こる。この変化は子宮の胚受容能の指標として知られるが、この細胞増殖の変化自体が着床の成否を調節しているかは不明である。そこで細胞増殖を抑制する機能を持つことが知られているがん抑制遺伝子であるretinoblastoma(Rb)の子宮特異的欠損マウスを用いて、RbおよびP4による着床期の子宮内膜上皮増殖抑制と着床の調節機構を検討した。方法として、Rb-loxPマウスとPgr-Creマウスを用いて子宮のRb欠損マウス(CKO)を作成し、コントロールマウス(Con)と着床の表現型を比較検討した。腟栓確認後に新生仔を得た雌マウスの割合はConが85%、CKOが16%であり、子宮のRb欠損で妊孕能が低下することが示された。腟腺確認日をDay1とすると、CKOでは着床直前であるDay4のKi67陽性の子宮内膜上皮細胞が著明に増加しており、Rb欠損による子宮内膜上皮細胞の増殖能亢進が認められた。CKOではDay5で胚接着は起こるもののDay6で胚浸潤の異常(間質へのトロホブラスト浸潤の異常)が認められ、Day8で70%の胚が死滅した(Conは0%)。CKOにDay2からP4投与(2mg/日)を行ったところ、Day4の子宮内膜上皮の細胞増殖が抑制されDay8の死滅胚は完全に消失しConと同等に新生仔が得られた。本研究により、RbおよびP4が着床直前の子宮内膜上皮の細胞増殖能と胚浸潤を調節していること、着床直前の子宮内膜上皮の細胞増殖抑制は単なる胚受容能の指標というだけでなく機能的な変化であることが示唆された。またP4はRbを介さない経路でも子宮内膜上皮の増殖抑制を誘導できたことから、黄体ホルモンによる子宮内膜の多様な細胞内シグナル調節経路の存在が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト子宮体癌のホルマリン固定サンプルからの遺伝子抽出が難航したため、子宮体癌に関連する子宮内膜増殖抑制する遺伝子の欠損マウスを作成し、マウスモデルを用いた研究に焦点を当てて進めることができたため、順調に成果が得られている。これらの成果をさらに発展させ、研究の更なる進展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
成果が上がっているマウスモデルを用いた研究を推進することで、更なる成果を得られるものと考えている。マウスモデルを用いた研究に焦点を当てて研究をさらに推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒト子宮体癌パラフィン検体からのmRNA回収に技術的に難渋し、それ以降の作業が進まなかったために次年度使用額が生じた。研究概要に示したようにマウスモデルを用いた研究で最近成果があがってきており、次年度に繰り越した研究費を成果が確実に期待できる研究内容の推進に当てて、次年度は確実に成果を得る予定である。
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