本研究においては、腹腔内の樹状細胞のサブセットに注目して、子宮内膜症の病因を解明する研究を行った。以前の研究で、子宮卵管造影に用いる油性造影剤が、子宮内膜症モデルマウスの子宮内膜症病変の形成を抑制することが分かっていた。また、油性造影剤がヒト腹腔内の樹状細胞の成熟化を誘導することも分かっていた。そのため、本研究では、油性造影剤が樹状細胞に与える影響について研究を行った。 以前、子宮内膜症患者の腹腔内の樹状細胞の貪食能が高いことを報告しているため、まず油性造影剤が樹状細胞の貪食能に与える影響について研究を行った。その結果、油性造影剤と培養したヒト単球由来の樹状細胞は、死細胞の貪食能が低下することが分かった。 次に、油性造影剤と培養した樹状細胞の、RNA発現をRNAアレイにて網羅的に解析を行った。その結果、IL10やIL1bRなどの抗炎症作用を持つサイトカインRNAが、コントロールに比べて発現増加しているという結果が得られた。またFunctional analysisにおいても、油性造影剤と培養した樹状細胞には抗炎症作用があると考えられた。 これらの結果から、油性造影剤は腹腔内の樹状細胞に抗炎症的な作用を誘導することが考えられた。また、子宮内膜症の発症に重要と考える逆流子宮内膜と樹状細胞の相互作用もブロックしていると考えられた。そのため、油性造影剤などの物質で腹腔内の樹状細胞の機能を変化させることで、子宮内膜症の治療につながるのではないかと考えらえた。
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