研究課題/領域番号 |
17K16836
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
村形 佐知 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 医療技術職員 (90746158)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | フラグメント / 不妊治療 / 受精卵 |
研究実績の概要 |
本研究では、ヒト受精卵の分割期に発生し、着床率低下につながるフラグメントの発生原因および機構を探り、良好な受精卵の培養への応用を目指している。フラグメントはヒト受精卵で頻繁に発生するがマウスではほとんど発生せず、分子レベルでの解析が進んでいないため、本研究ではマウス受精卵にフラグメントを発生させる系を構築し、発生原因および機構を解析することを目的としている。2017年度は、媒精で得られたマウス受精卵の前核期にペントキシフィリンを注入し、フラグメントが発生するかを観察した。しかし、ペントキシフィリン注入卵でフラグメントは増加せず、今後注入濃度や時期を検討する必要があると考えられた。 ヒト受精卵においては、2015年から2016年に当院の不妊治療において得られたヒト受精卵のフラグメントの臨床データを2017年の日本受精着床学会で発表した。正常受精した胚の受精後3日でのフラグメントの割合を0%、20%以下、40%以下、40%以上の4グループに分け、さらに妻の年齢を35歳以下、36~40歳、41歳以上の3グループに分け、それぞれの良好胚盤胞到達率を比較した。フラグメントの割合に年齢差は無かったが、同量のフラグメントが出た場合年齢が高くなると良好胚盤胞到達率が減少することが確認された。また胚盤胞移植において、受精3日後のフラグメントの割合が0%と20%以下の群で妊娠率が同等であったことから、20%以下のフラグメントは妊娠率に影響しないことが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス受精卵にフラグメントを発生させる系を2つ構築させる予定であったが、ピエゾドライブユニットを使用できず顕微授精を実行不可能になったため、顕微授精を回避し、媒精する実験方法に変更した。1つ目のペントキシフィリンを使用する方法では、媒精で得られたマウス受精卵の前核期にペントキシフィリンを注入した。しかし、ペントキシフィリン注入卵でフラグメントは増加せず、今後注入濃度や時期を検討する必要があると考えられた。2つ目のヒアルロン酸を使用する方法については、人工的に精子にダメージを与え、媒精する実験方法に変更して今後行う。不妊治療においてはヒアルロン酸を用いたICSIを行っているため、フラグメントのデータを蓄積しているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続きマウス受精卵にフラグメントを発生させる系の構築を行う。また、不妊治療におけるフラグメントデータとの比較も順次行っていく。 また、不妊治療において、フラグメントに似ているが区別するべき現象が出てきたため、この現象についても解析していきたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ピエゾドライブユニットの購入を断念したため、次年度の使用額が多く生じた。研究計画時には無かったフラグメントに関する新しい臨床データが出てきているので、その解析に使用したいと考えている。
|