平成29年度の研究実施計画、”細胞内カルシウム伝達を活性化させるSsdがミトコンドリア分裂とアポトーシスを誘導するメカニズムを、in vitroで証明する”、において、Ssdが、Drp1のミトコンドリア融合に関わるリン酸化を抑制するだけではなく、ミトコンドリア融合タンパクであるOpa1が誘導するミトコンドリア融合の抑制、更には細胞内カルシウム濃度を上昇させることによってミトコンドリア膜電位の消失とDrp1の上流タンパクであるCaMK1の活性化、という異なる作用機序によって抗癌剤抵抗性卵巣癌細胞においてミトコンドリア分裂とアポトーシスを誘導することを証明した。また癌細胞の増殖において重要な経路の一つである細胞周期へ与える影響を、チェックポイント機構に焦点を当てて検証し、抗癌剤抵抗性との関連とSsdがもたらす影響についても証明した。これらの機序をまとめて、学会発表および論文投稿も行った(Oncotarget. 2017 8(59):99825-99840.)。 平成30年度は、”卵巣癌患者の摘出標本におけるDrp1及びその関連タンパクの発現と予後との関連を後方視的に検討する”、において、約50人の卵巣癌患者の残余組織検体からパラフィンブロックを作製し薄切、in vitroで証明した細胞内カルシウム伝達およびミトコンドリア分裂に関連するタンパク発現を免疫組織化学検査によって証明し、その発現と患者予後との関連について解析を行った。 令和元年度は、解析結果から卵巣癌患者において、ミトコンドリアの融合に関わるリン酸化Drp1、およびその上流タンパクであるCaMKIの発現が、既存の予後予測因子と有意に相関するだけではなく、リン酸化Drp1発現が無増悪生存率を予測する独立した因子であることを証明し、論文投稿を行った(BMC Cancer. 2020 Epub ahead of print)。
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