本研究は、胎内治療のない胎児発育不全の治療法の確立が目的である。我が国では、低出生体重児は増加傾向であり、神経学的障害及び発達障害、成人期における生活習慣病が増加することが予想される。低出生体重児を減らすことは、今後、少子化と医療費の増大が懸念される我が国において、極めて重大な課題である。 私達は、胎児発育不全に対するホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害薬:タダラフィル投与の有効性に関して、第Ⅱ相多施設共同試験(ランダム化比較試験)を開始した。試験内容は、胎児発育不全、妊娠22週以降34週未満、単胎、染色体異常が認められないものを対象とし、登録時にA群(従来型治療群)とB群(タダラフィル群)の2群へランダムに割り付けを行った。A群はガイドラインに沿って、従来型の治療を行い、B群はタダラフィル20mg/日の内服を分娩まで行った。主要エンドポイントはプロトコール治療開始後から出生までの胎児発育速度(g/日)、副次エンドポイントは治療完遂率、治療効果、安全性とし、従来治療とランダム化比較試験で評価した。また、胎児発育不全の病態を解明すべく、PDE5阻害薬の臓器選択性に着目し、タダラフィル内服群において、内服前後の母体心機能を評価し、タダラフィルによる作用機序を検討した。同治療が有効であった出生週数の延長、出生体重の増加により周産期予後が改善し、医療費など問題を抱えている現代にもたらす効果は大きいと考えられる。
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