研究実績の概要 |
早産は新生児死亡、後遺症の重要な原因であり、早産の予防・治療は周産期医学領域における喫緊の課題である。早産の病態には子宮内における感染と炎症が深く関与している。本研究ではヒト羊膜間葉細胞において、Toll-like receptor 4(TLR4)の活性化を阻害することで、炎症(子宮頸管熟化・子宮収縮)およびコラーゲン分解(羊膜破綻)を抑制し、早産治療に資する薬剤の発見と効果判定を行うことを目的とした。 まず、アメリカ合衆国テキサス大学(Southwestern Medical Center)と協同し、High Throughput Screeningを行い、8320の化合物ライブラリーの中から、候補となる化合物6種(化合物A~Fとする)を同定した。6種類の化合物がHEK細胞におけるTLR4の活性化をどれくらい抑制するかを化合物濃度を変えて検討したところ、50%阻害濃度(IC50)は、1.46±1.49 μMであり、化合物C(Econazole nitrate)、化合物D(Parthnolide)のIC50はそれぞれ0.30 μM、0.31 μMと最も低かった。したがってこれら化合C,Dが有力な候補化合物であると判断できた。次に、これらの化合物と、ヒト羊膜間葉細胞を培養し、そこへLPS、胎児フィブロネクチン、EDAといった早産誘発物質を添加したところ、化合物のない培養系ではIL-8やCOX2、PGE2の増加がみられたが、化合物を添加した培養系では炎症系サイトカイン、COX2、PGE2の増加が抑制された。化合物C.Dは早産治療の候補物質になることが示唆される。
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