好中球増多を伴う子宮体癌において好中球の腫瘍内浸潤を促すメカニズムの検討を行うにあたり、今年度は循環好中球から TAN への分化を促進するメカニズムの検討を行うにあたり、TANと同様に骨髄由来細胞であり、免疫抑制により癌の進展に関わることが証明されている TAN に類似の MDSC (myeloid derived suppressor cells)を使用しMDSC への分化機構の検討を行った。 まず、子宮体癌において、腫瘍細胞が何らかのケモカインを分泌しケモカイン受容体を発現する好中球に対して走化性を引き起こすという仮説をたて証明を行った。過去の報告から責任ケモカインの候補をCXCL2と同定し、子宮体癌細胞株に CXCL2 が発現していることを確認し、その受容体であるCXCR2が MDSCに発現していることを確認した。次に細胞動態解析装置を用い、MDSCがCXCL2の濃度勾配に従って遊走することを証明した。また、CXCR2 antagonistによりChemotaxisが抑制されることを確認した。 続いて、MDSC への分化機構の解明を行うにあたり、子宮体癌を含む一定の癌腫ではエストロゲンが癌の進展に関わることが知られていることより、17β-estradiol(E2)が MDSC の分化に関わっているのではないかと仮説をたてその立証を行った。ERα-negativeの細胞株を用い、マウスの xenograft model による検討を行った。骨髄中、腫瘍中の MDSC の分化誘導をフローサイトメトリーで検討したところ、E2投与により MDSC の誘導が促進され、E2 inhibitor の投与により効果が打ち消されることが確認された。また、CD8+T細胞抑制能を T cell suppression assay にて比較したところ、E2 投与によりCD8+T細胞抑制が亢進することが証明された。 これら結果を受けて、TANを用いて、ケモカインーケモカイン受容体Axisに焦点をあてて分化の促進機構を検討している段階である。
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