研究課題
卵巣高悪性度漿液性癌(HGSOC)の卵管上皮起源説が注目されている。我々は以前に、癌化に必要な3つの遺伝子異常(p53/KRAS/c-Myc or Akt)を同定し、卵管采上皮不死化細胞株を用いたin vitro発癌モデルを構築し、発癌初期病変であるSerous tubal intraepithelial carcinoma (STIC) におけるシグナル異常の同定を行い、 卵管采への排卵時の卵胞液による刺激がHGSOC発癌の初期段階に関与していることが示唆された。2018年度は、漿液性嚢胞腺腫の上皮細胞の由来の同定、さらには腺腫へ至る機序を解明することを目的とした。漿液性嚢胞腺腫、卵管上皮、卵巣表層上皮(OSE)における上皮細胞の形態をHE染色や免疫染色にて検討した。また、OSE不死化細胞株に手術検体で得られた漿液性嚢胞腺腫内容液を添加し、Calretinin, PAX8の発現をrealtime PCRにて評価し、さらにMicroarray解析を行った。漿液性嚢胞腺腫全例で同一嚢胞内に非円柱状の細胞(Calretinin陽性)と繊毛細胞(PAX8陽性)の混在を認めた。その一方、OSEは全例で非円柱状の細胞から構成され、Calretinin陽性、PAX8陰性であった。OSE不死化細胞株に漿液性嚢胞腺腫内容液を添加したところ継時的にCalretinin発現が低下し、PAX8発現が上昇した。Microarray解析では添加後サンプルでNFkB発現上昇を認めた。OSE由来の細胞が嚢胞内容液の曝露等の刺激を受けてNFkB活性化を来し、それが卵管上皮化生に寄与してPAX8発現を来し、最終的には繊毛細胞を含む卵管上皮様細胞の形態に移行していく可能性を考える。低悪性度漿液性癌は漿液性嚢胞腺腫から発生すると考えられており、本結果が発癌機序の解明の一助になると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
研究計画書に沿い、計画通りに研究を遂行できているため
今後も研究計画書に沿い、研究を進めていく予定である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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