研究実績の概要 |
(目的)2018年までに妊産婦の出産年齢の上昇,無痛分娩に起因する難産症例が増加する昨今,分娩時血糖の動向をリアルタイムCGMで評価し,分娩中における血糖動態を解明した.2019年度は分娩時間の延長や遷延が血糖動態へどう影響するのかに関してGDM群と正常血糖(対象)群を比較検討し解明する.(方法) 2016年から2019年までの37ヶ月間に経腟分娩を施行した116例の内,除外された結果,GDM群:32例,対象群:32例となった.ガイドラインを遵守し,分娩中は当院の管理指針を用い,必要時自由に飲食を摂取した.測定期間を4段階に分けた(1.活動期~全開大,2,全開大~分娩,3,分娩後~12時間,4,分娩後12時間後~48時間迄). 血糖動態をリアルタイムCGMで測定し統計解析を施行.(結果)統計不能GDM5例,対照群6例,Overt DM2例,産後1型DM1例を除外したGDM群:24例,対象群:26例.1-4期で測定中にインスリン療法の使用例はなし.1-4期の血糖動態はGDM・対象群共に同様形態で,血糖上昇の主原因はGDMの有無ではなく,時期が血糖値に影響を与え,3期が最大値となった.1期の分娩期間が遷延しても2期以降に影響を認めなかった.2期の遷延に関しては,対象群では血糖値に影響を認めなかったが, GDM群では2期が遷延することにより血糖を有意に上昇させることが認められた(p=0.022).回帰係数の値から,2期が1分長くなる毎に血糖値が約0.058mg/dlずつ直線的な上昇を認めた.(考察)分娩第2期の遷延により活動期以降はVO2 Max40-70%の運動を強いられる.アドレナリンなど糖新生因子は強運動開始後2時間程度で血中濃度が上昇を始めることが示唆されており,第2期は顕著となる.インスリン抵抗性を認めるGDM群では第2期の遷延が血糖値上昇に起因する可能性が示唆された.
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