子宮体癌に着目して研究解析を行った。582例の子宮体癌、および53例の正常臓器のmRNA sequenceによる遺伝子発現データをTCGAおよびGTEよりダウンロードし、子宮体癌にのみ発現している遺伝子を同定した。 HLA-A*24およびHLA-A*02に親和度の高い遺伝子配列をニューラルネットワークを用いたソフトウェア(netMHC)により同定した。正常臓器に比して子宮体癌に発現が高い71遺伝子のうち、上位10遺伝子に関して親和度の高いペプチドを検索したところ、 HLA-A*24において21個、HLA-A*02において146個のペプチドが同定され、特に親和度の高いペプチドをHLA-A*24において15個、HLA-A*02において58個有す遺伝子A(遺伝子名未公表)を同定した。遺伝子発現レベルを既存の免疫治療のターゲットとして用いられているWT1と比較すると、遺伝子Aは子宮体癌において約31倍の発現を認めるものの、正常組織においては0.0003倍にしか満たず、極めて腫瘍特異的な免疫治療ターゲットと考えられた。また、遺伝子Aにおける蛋白質発現を20の癌腫(子宮体癌を含む)にて検索を行った所、卵巣癌および子宮体癌を含む13の癌腫において子宮体癌と比し高頻度で発現を認めた。特に尿管癌、頭頚部癌、メラノーマ、甲状腺癌、肝細胞癌においては20%を超える患者において高発現率を示し、子宮体癌のみならずその他の癌腫においても本遺伝子が免疫治療のターゲットとなりうる事が示された。本遺伝子Aに対するペプチドを作成し、現在それにより誘導されるCTLによる抗腫瘍効果を現在評価している。同時に、免疫治療法としてどのような形で提供するのが良いかを検討する予定としている。
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