研究課題/領域番号 |
17K16869
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
村上 功 慶應義塾大学, 医学部, 共同研究員 (70445237)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 低リスク型ヒトパピローマウイルス / 高リスク型ヒトパピローマウイルス / p53 / K10 / MCM / 生活環 |
研究実績の概要 |
角化細胞の中で最も生体内での生活環を模倣している normal immortal keratinocytes (NIKS)にHPV11 と HPV16 を導入し、恒常的にHPVが発現しているNIKSの作製に成功した。 HPV を導入した NIKS を day1 から day7 まで培養し細胞を回収、AllPrep DNA/RNA/Protein Mini Kit(Qiagen) を用いて DNA、RNA、タンパク質を抽出した。抽出した DNAから定量PCRにてゲノムコピー数を測定するとHPV11とHPV16共にNIKSがconfluenceに達するまでゲノムコピー数は維持された。confluence後ではHPV16のゲノムコピー数は上昇したのに対し,HPV11は低下した。 次にHPVを導入したNIKSを 4-well CultureSlides(Falcon)に撒きday1からday7まで培養した。ホルマリン固定した後、MCM(細胞周期マーカー)や K10(分化マーカー)、p53の発現を確認した。 HPV16はconfluence後にK10が陰性、MCMが陽性であったのに対し、HPV11ではK10は陽性、MCMは陰性であった。またHPV11E6はp53を分解しないと一般的に考えられているが、我々の系ではconfluence後でHPV11E6によるp53の分解を認めた。この現象は免疫染色とwestern blottingで確認した。p53存在下ではHPV16においてもconfluence後のHPV16ゲノムコピー数の低下を認めた。一方で、p53非存在下ではconfluence後のHPV11ゲノムコピー数は維持された。 mRNAの発現を解析するとHPV16E6はconfluence前後共に発現していたのに対し、HPV11E6はconfluence前後共に発現を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りHPV11/HPV16がepisomalで存在しているNIKSの作製に成功し、それに引き続き実験を遂行することができた。細胞をDay1からDay7まで培養し、回収することでconfluence前後の細胞を回収し解析する系の確立に成功した。DNA/RNA/たんぱく質を同時に精製することができるため効率よく、再現性の高い系である。概ね当初の予定通りに進展していると考えられる。また、p53の発現に関して新しい知見が得られており、平成30年度の研究の礎を築けた1年であったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の結果より、p53のHPV11/HPV16ゲノムの維持・複製に対する影響を検討する。具体的にはp53に対するsiRNAを用いてp53の発現を抑制した状態でのゲノムコピー数の変化を検討する。またp53を分解することができない変異型HPV16 (HPV16E6SATmutant)を用いて同様の実験を施行予定である。 また、HPV初期遺伝子群の発現とHPV11/HPV16ゲノムの維持・複製の関連に関して検討を行う。具体的には各初期遺伝子が欠損したHPV11/HPV16を作製し、NIKSへ遺伝子導入する。これらの細胞をday1からday7まで培養し、ゲノムコピー数の変化を確認する。 平成 30 年度の当初の研究計画であった臨床検体における低リスク型と高リスク型HPVのゲノム量、初期遺伝子発現の変化の解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、本年度の消耗品購入に充てる予定である。 平成30年度は「今後の研究の推進方策」に記述した実験を遂行するために必要な試薬・消耗品・共通機器使用に研究費を使用する。また、今年度は国内学会での口演が決定しており参加予定である。その他国際学会・国内学会発表を精力的に行うと共に現在準備中の論文を投稿する予定である。
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