前年度に開発を行ったクローナリティとヘテロ接合性の消失(LOH)のスコアリング手法を用いて,The Cancer Genome Atlas(TCGA)のオープンソースデータから卵巣高異型度漿液性癌(HGSOC)のSNPアレイデータを入手して解析を行った.クローナリティ・LOHスコアをそれぞれ2群に分類して予後解析を行ったところ,高クローナリティ群が早期の初回再発と有意に関連することが示された.また,高LOHスコア群では予後良好であることが明らかになった.そして,この2つを組み合わせることで,低クローナリティ高LOHでは他の群に比べて予後良好であることが明らかになった. 次に,TCGAから遺伝子発現データを入手し,これまでに報告されている4サブタイプ分類とクローナリティ,LOHスコアの関連性について解析したところ,間質反応が著明で予後不良なMesenchymalサブタイプは高クローナリティと,リンパ球浸潤が著明で予後良好なImmunoreactiveサブタイプは高LOHスコアに関連することが明らかになった.また,パスウェイ解析を行ったところ,高LOH群では免疫関連の細胞の遊走・活性化に関与するパスウェイが活性化されていることが明らかになった.これにより,クローナリティとLOHスコアがHGSOCの予後バイオマーカーとなる可能性が示唆された. 最後に,自施設でのHGSOC症例で,術前化学療法(NAC)を施行した4症例でクローナリティとLOHスコアの変化について解析を行った結果,4症例中全ての症例においてクローナリティが化学療法前後で減少し,LOHスコアは4症例中2症例で減少し,残りの2症例ではほぼ変化が認められなかった.この結果から,化学療法により薬剤感受性の腫瘍クローンが減少するが,残存するクローンのLOHスコアは変化するものとしないものがあることが示唆された.
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