双胎間輸血症候群(TTTS)の受血児は、循環血液量の増加と、吻合血管を介した供血児からのホルモン分泌移行により特異的な鬱血性心不全を呈する。どのような受血児に心不全が発症するかは現在のところ不明である。本研究では、レーザー凝固術(FLP)を施行した症例で、術前の受血児心機能計測(myocardial performance index: MPI)と、受血児羊水を用いて心不全マーカー(ナトリウム利尿ペプチド前駆体:NT-proBNP)を測定し、受血児心不全の評価を行った。 TTTS stage1-4の診断でFLPを施行した症例中、手術直前に受血児MPIの計測が可能で、かつFLP時受血児羊水を採取した25例を対象とした。超音波計測はdual-gate Doppler法でMPIを測定した。 受血児に血流異常を認めないQuintero分類TTTS stage1~3donorが21例(A群)、血流異常を認めるstage3recipient、stage4が4例(B群)であった。両群間の受血児左室MPI中央値は0.489 vs 0.400、右室MPI中央値は0.493 vs 0.435で有意差を認めなかった(A群 vs B群、p>0.05)。羊水中の総蛋白量(TP)で除したNT-proBNP/TP比(ng/g)はA群1385 (153-3105)、B群3773 (1846-6450)であり、B群が有意に高値となった(p=0.04)。受血児25例中、B群のstage4であった一例はFLP治療後、4日目に胎児死亡となったが、他24例は生存し出生している。 心不全マーカーであるNT-proBNP/TP比は、TTTS分類における受血児血流異常症例において高値であった。NT-proBNP/TP比はTTTS分類における重症度判定と一致しており、心不全マーカーの計測は臨床的有用性があると考えられた。
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