研究実績の概要 |
胎盤は受精卵に由来する羊膜と絨毛膜、そして母胎組織に由来する脱落膜から構成され妊娠5ヶ月までに組織発生的基盤が完成する。妊娠高血圧症候群や胎児発育不全等では胎盤の機能不全が指摘されているが、着床期から胎盤発生を対象に研究を進めるのは困難である。そこでヒト胎盤分化モデルが構築されれば胎盤発生段階的に分子レベルで組織機能と関連した解析が可能となる。本研究では、ヒト人工多能性幹(iPS)細胞から胎盤栄養外胚葉系のトロホブラスト分化誘導系を用い先天性感染症のin vitroモデルを構築する。ヒトiPSCからトロホブラストへの分化誘導では、異種成分を含まないゼノフリーを基本としたBMP4添加分化誘導系(Kojima, et al. Lab Invest 2017)を用いて行った。3Dモデルの胎盤組織構築のため、種々の細胞外基質と細胞スフェア形成のタイミングを検討した結果、ラミニンをBMP4添加分化誘導系に併用することで3D胎盤組織の分化誘導に成功しhCGが陽性となることを確認した。今後は、胎盤組織としての細胞・組織学的解析を行い、内分泌機能など機能性評価を行っていく。胎盤の成熟化組織の検証として、母児感染のin vitro系モデル構築を目指すために、サイトメガロウイルス(CMV)を例に3D-胎盤組織へのCMV感染検証を行う。CMVウイルスRNAの増幅、3D組織形態の影響や胎盤系組織細胞に関する遺伝子発現動態の変化を解析していく。
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