研究実績の概要 |
若手B 川崎 2019年度報告書 メモ
胎盤は受精卵に由来する羊膜と絨毛膜、そして母胎組織に由来する脱落膜から構成され妊娠5ヶ月までに組織発生的基盤が完成する。妊娠高血圧症候群や胎児発育不全等では胎盤の機能不全が指摘されているが、着床期から胎盤発生を対象に研究を進めるのは困難である。そこでヒト胎盤分化モデルが構築されれば胎盤発生段階的に分子レベルで組織機能と関連した解析が可能となる。本研究では、ヒト人工多能性幹(iPS)細胞から胎盤栄養外胚葉系のトロホブラスト分化誘導系を用い先天性感染症のin vitroモデルを構築する。ヒトiPSCからトロホブラストへの分化誘導では、異種成分を含まないゼノフリーを基本としたBMP4添加分化誘導系(Kojima, et al. Lab Invest 2017)を用いて行った。今年度は、さらに、この2Dトロホブラスト分化誘導系を応用し、トロホブラスト分化誘導初期マーカーKRT7を用いフローサイトメーターから分化誘導物を選別した。そこから新たな胎盤分化誘導マーカーを見いだすことができ、国際専門誌へ報告できた(Tsuchida, Placenta 2019)。さらに、3Dモデルの胎盤組織構築のため、種々の細胞外基質と細胞スフェア形成のタイミングを検討した結果、ラミニンをBMP4添加分化誘導系に併用することで3D胎盤組織の分化誘導に成功しhCGが陽性、組織学的にトロホブラスト細胞層が外側にきてhCG陽性であり通常の胎盤組織と類似することなることを確認した。感染症モデルとしての検証としても、3D胎盤オルガノイドでCMV感染の有無を検証したところCMVの感染(CMVの転写)が認められた。より詳細に検証し経胎盤移行のバイオモデルを構築していく新規のモデルを構築することができた。周産期の体外培養系試験を可能とする画期的なバイオモデルを開発し得た。
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