研究課題/領域番号 |
17K16881
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
植木 有紗 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (60445319)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / 遺伝性腫瘍 / メチル化 / ヒストン修飾 |
研究実績の概要 |
発がんにおけるエピジェネティックな修飾機序は、一部の癌腫で報告され注目を集めている。申請者らはこれまでに、子宮癌肉腫検体を用いてヒストン修飾状態と予後との相関を見出し報告した。本申請研究では、婦人科悪性腫瘍におけるエピジェネティックな修飾機序について広く解析し、新たな治療戦略確立のためのエピジェネティクス関連薬剤の有効性について検証することを目的とするとともに、一部の遺伝性腫瘍症候群では、原因遺伝子上流のプロモーター高メチル化との関連が報告されており、治療への応用展開を試みることを目的とする。 現在、婦人科悪性腫瘍検体を用いて、エピジェネティクス修飾発現の臨床的意義について腫瘍におけるメチル化、ヒストン修飾について発現解析を進行中である。メチル化解析のために、ホルマリン固定・パラフィン包埋(FFPE)組織からDNA抽出しメチル化解析を行う。子宮体癌/子宮内膜異型増殖症検体における検討としては、子宮体癌が関連腫瘍として知られるLynch症候群を念頭に、第一段階としてMLH1プロモーターのメチル化解析を行う。Lynch症候群女性では、子宮内膜異型増殖症の段階でMLH1プロモーターのメチル化が報告されており、前癌病変の早い段階でDNAのメチル化が関わることが示唆される。子宮内膜異型増殖症から子宮体癌に移行した症例と軽快した症例とを層別化し比較することで、臨床プロファイルの検討が可能になる。卵巣癌/卵巣境界悪性腫瘍検体における検討として卵巣癌はHBOCおよびLynch症候群の関連腫瘍として知られており、BRCA1およびMLH1プロモーターのメチル化解析を行う。子宮体癌/子宮内膜異型増殖症検体とは異なり、時系列での変化を観察することは困難だが、卵巣癌/卵巣境界悪性腫瘍症例のメチル化解析結果を層別化し比較することで、関連する臨床像を解析する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現在までに、同意を取得した数名の患者から検体提供を受け、エピジェネティクス関連解析を行った。また遺伝性腫瘍を疑う患者については、遺伝カウンセリングの上で希望がある場合、遺伝学的検査を行った。申請者の出産に伴う研究中止期間があり、当初の研究計画に比較する進捗は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当初、婦人科悪性腫瘍検体を用いる計画であったが、研究計画時と比較して申請者の所属変更およびがんゲノム診療の臨床応用などの社会的背景から、幅広い癌腫におけるがんゲノム解析結果の利用が可能となった。従って今後は様々な癌腫におけるがんゲノム解析結果とエピジェネティクス関連遺伝子変化などを参考にしながら、より広い癌腫を対象とした研究計画を推進していく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は「産前産後の休暇又は育児休業の取得に伴う科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)補助事業期間延長承認」を取得し、2019年9月より研究再開予定であったが、復職時に所属部門の変更があり、研究環境の整備に時間を要したため。2019年度に研究環境を整備し、2020年度中の研究遂行の計画を立案している。
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