前年度までの研究で、外耳道癌組織に対する免疫組織学的手法を用いた解析によって、p53、EGFR、cyclin D1、p16、NOTCH1の発現異常が確認された。この結果をうけて、今年度は次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析でも同様の結果が得られるか検討した。 外耳道癌組織サンプルは生検または手術時に原発巣から採取され、PAXgene Tissue Systemを使用して固定され、DNA抽出までパラフィンに包埋した。サンプルとして採取された外耳道癌組織のうち、壊死組織や炎症・出血などの混入が多く、腫瘍組織由来のDNA量と質が不十分と判断されたものは除外した。遺伝子解析に適格と判断された外耳道癌組織サンプルは22検体であった。 同定された遺伝子変異は、TP53(59.1%)とCREBBP(9.1%)であった。TP53変異は、T分類と有意な相関関係を示した(p=0.027)。TP53変異のある外耳道癌患者とTP53変異の無い外耳道癌患者の5年全生存率は、それぞれ45.0%と75.0%だった。Cox比例ハザードモデルによる多変量解析では、TP53変異が外耳道癌患者の生存率に関して独立した予後因子であることが示された(p=0.007)。 本研究から、TP53変異が、外耳道癌の進展度および生存率を予測するためのバイオマーカーとなりえることが示唆された。また、皮膚癌の約30%程度で同定されるCREBBP変異が同定されたことより、外耳道癌の遺伝子変異は粘膜から発生する頭頸部扁平上皮癌よりも皮膚癌に類似している可能性も示唆された。
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