本研究では13価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV13)が本邦の小児急性中耳炎に与えた影響を評価すべく平成29年度から東北労災病院において0-3歳児の急性中耳炎児の中耳貯留液から分離された肺炎球菌の収集を行っている。菌株の収集は平成29年度から平成30年度にまたがって行う計画で、計画通りに平成30年度で菌株数の収集を完了とした。 収集した菌株の血清型の解析は平成30年度から開始した。血清型解析はStatens Serum Institut社製の抗莢膜免疫抗体を用いておこなう莢膜膨化試験(Neufeld capsular swelling test)にて行っており、令和1年度末の時点で収集菌株の血清型の初回解析が終了し、本研究において着目している血清型15Aの多剤耐性肺炎球菌の動向についてPCV13導入以前より血清型15Aが占める比率が増大している傾向がみられた。令和2年度には初回解析の時点で保有していた抗体で詳細な解析ができなかった血清型29/34/35/42/47の菌株について追加解析を行い、これらの菌株の血清型の解析を完了した。追加解析の結果を踏まえても血清型15Aが占める比率が増大している傾向に変わりはなかった。 また、微量液体希釈法による薬剤感受性測定は令和1年度から開始し、計画通りに令和1年度に全菌株の薬剤感受性測定を終了した。その結果、7価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV7) でカバーされる血清型は0%で、PCV13でカバーされる血清型は9.1%であった。 令和2年度にはこれまでに本研究において得られた知見を論文としてまとめ、日本臨床微生物学会雑誌31巻1号において報告を行った。
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