研究実績の概要 |
我々の施設では耳科手術を内視鏡下に低侵襲・安全確実に行うことを世界に先駆けて行っている。内視鏡下耳科手術は通常の顕微鏡下耳科手術に比べて術後疼痛が少なく低侵襲であることを報告している(Kakehata et al. Otol Neurol. 2018)。それを応用して、2015年8月より高度顔面神経麻痺例にbFGFを使用した内視鏡下再生術を新たに開発して開始している(倫理委員会承認済)。手術時間が短く、骨削開を要さず、術後疼痛が少ないことが既に明らかになっている。いくつかの学会で報告してきた(日本顔面神経学会パネルディスカッション(2018)、日本顔面神経学会シンポジウム(2019)、3nd world congress on endoscopic ear surgery(2019))が、現在約50例にまで症例数が増え、特に、Bell麻痺高度麻痺例への改善が確かめられ、独自性と創造性に優れた手術として2022年4月の国際顔面シンポジウムのシンポジウムで成果を報告した。その内容は論文投稿中であるが、まだ採択されておらず、採択にむけた取り組みを継続予定である。 ただし、基礎実験面では、bFGFの良好な神経回復がまだ証明できておらず、他の再生因子の方が有用である可能性も示唆されており、bFGF以外の再生因子の今後の臨床応用へ向けた取り組みも検討しないといけないと考えていた。そして基礎実験で、IGF-1の投与に より、コントロール群と比べて顔面神経麻痺モデルに対する治癒率が有意に改善したことを発見し、論文報告した(J Physiol Sci, 2020)。bFGFよりもさらに有効性の高い再生因子である可能性が高いことと考え、今後の臨床応用を検討中である。
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