研究課題/領域番号 |
17K16889
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
寺田 小百合 山形大学, 医学部, 医員 (40795697)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ASSR / Chirp音 |
研究実績の概要 |
Chirp音による聴性定常反応(ASSR)は従来のAM2音によるシステムに比較して、短い検査時間で精度の高い聴力評価が可能と期待されているが、新しい検査システムであるため詳細な分析を行った報告は少ない。本研究では、Chirp音によるASSRの検査精度と検査時間、そして小児難聴児に対する残存聴力活用型人工内耳(EAS)の有効性について検討することが目的である。 平成30年度は、小児例においてChirp音刺激によるASSRの反応閾値を純音聴力検査の反応閾値と比較し、Chirp音刺激によるASSRの検査精度を検討した。さらに小児例において睡眠下での刺激頻度の検査条件を検討した。 令和元年度は、小児例において、Chirp音によるASSRと従来のAM2音によるASSRについて、検査精度と検査時間をそれぞれ比較検討した。その結果、Chirp音によるASSRの閾値は純音聴力検査閾値を概ね反映しており、さらに従来のAM2音によるASSRと比較して検査時間の短縮が可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年度は、小児例において、Chirp音によるASSRと従来のAM2音によるASSRについて、検査精度と検査時間をそれぞれ比較検討した。対象はChirp音によるASSRを施行した群と、過去にAM2音によるASSRを施行した群に分けて比較検討した。検査精度については、ASSR反応閾値と純音聴力閾値または遊戯聴力閾値との相関関係を周波数ごとに検討した。また、ASSR閾値から音聴力閾値または遊戯聴力閾値を引いたものをdifference score(DS)とし、Chirp音とAM2音のDSを比較検討した。その結果、Chirp音によるASSRの閾値は、純音聴力検査閾値を概ね反映しており、AM2音によるASSRと遜色ない検査精度であった。さらに、検査時間については、刺激開始から左右4周波数全てが反応なしと判定されるまでを測定し、両群間で比較した。その結果、AM2音によるASSR の検査時間は平均59分であったのに対し、Chirp音によるASSRの検査時間は平均21分と明らかな短縮を認めた。これらの検討から、Chirp音によるASSRはAM2音によるASSRと同等の検査精度を有し、検査時間の短縮が可能であることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度はさらに症例を追加し、より検査精度の高いASSRを目指すため、刺激頻度や骨導ASSRなど、検査条件についても検討する予定である。 また、令和元年度は症例を蓄積することが難しかったが、Chirp音刺激によるASSRのEAS適応症例における有用性の検討のため、EASの適応と考えられる症例において、術前の残存聴力評価を純音聴力検査および従来のASSRでの評価に加えて、Chirp音によるASSRで再評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究課題についての学会発表のための旅費と論文作成のための人件費が必要であった。
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