研究課題/領域番号 |
17K16892
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
伊原 史英 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (40779906)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 制御性T細胞 / 頭頸部扁平上皮癌 / 骨髄性抑制細胞 / effector Treg / NKT細胞 |
研究実績の概要 |
頭頸部癌患者では、制御性T細胞 (Treg) や骨髄性抑制細胞 (MDSC) などの免疫抑制細胞により誘導された抗腫瘍免疫抑制が、腫瘍の進展や治療抵抗性に関与している可能性が示唆されている。これまでの申請者の研究により、Tregの中で活性化された抑制作用の強い細胞集団であるeffector Treg (eTreg) が頭頸部扁平上皮癌患者の臨床経過、予後と相関することが報告された。本研究では、eTregを誘導する因子の探索、さらにeTregに特異的な遺伝子発現を同定し、通常の血液検査で可能な、より簡便で鋭敏な再発診断マーカーの探索を目的とする。昨年度までに、他の分画と比較してeTregがより強力にT細胞、NKT細胞などエフェクター細胞の機能を抑制すること明らかにした。特にNKT細胞に関しては、今までヒトでは明らかになっていなかった、樹状細胞を介した細胞接触を必要とする抑制機序の一部を解明した。さらに、MDSCとTregは癌患者の末梢血において相関して増加することも明らかとしたが、この結果はMDSCがTregを誘導している可能性を示唆していると考える。今後は、腫瘍組織内に浸潤したTregやMDSCなどの免疫細胞について解析を行い、頭頸部癌患者の微小環境における抑制環境について詳細な検討を行いたいと考えている。 さらに、現在までに健常人の末梢血を用いてeTregに特異的な遺伝子発現について探索を行なっており、候補遺伝子を明確としたのちに頭頸部扁平上皮癌患者の末梢血中の変動について検討を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
はじめに、eTregの機能や抑制機序について詳細な検討が必要であり、健常人の末梢血を用いたin vitroの基礎研究を行なった。この基礎研究を通して、Tregの中でeTregが他の分画と比較しても、T細胞やNKT細胞に対して非常に強力な抑制作用を持つことを見出した。さらに、同じ免疫抑制細胞であるMDCSとは正の相関を示しており、相互作用を有する可能性が考えられた。これらの解析に、十分な時間を用いたため、腫瘍組織の解析には至らず、腫瘍微小環境において免疫抑制を誘導している因子、特にTregをeTregへと誘導している因子の探索には至らなかった。また、eTregに特異的遺伝子の探索は、これまでに行われていない解析となるため、解析方法の確立が必要となった。昨年度までに、健常人の末梢血を用いて、eTregを単離する方法、純度の高いmRNAを得る実験的手法については確立できたと考えているため、今年度は昨年度に確立した方法を用いて健常人の末梢血、さらに頭頸部がん患者の末梢血を用いて特異的遺伝子の探索が行えるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究で得られた実験方法を元に、eTregの特異的遺伝子の同定を進めると同時に、頭頸部扁平上皮癌患者の腫瘍組織を用いて腫瘍組織内の免疫環境の検討を行う。予定症例数に至らない場合は、扁平上皮癌に限らず、他の組織型の頭頸部癌患者も対象とする。また、同定された特異的遺伝子が再発、診断のマーカーとなり得るかについての評価は可能と考えているが、予後との相関については、治療後3年は経過観察が必要となるため、本年度の検討では不十分となると考えられるため、今後も引き続き臨床経過について観察が必要となると考えている。
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