研究課題/領域番号 |
17K16893
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
越塚 慶一 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (00791609)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マイクロRNA / 頭頸部扁平上皮癌 / インテグリン |
研究実績の概要 |
申請者の所属する研究室はマイクロRNA(miRNA)の研究を継続的に行い、多くの研究成果を報告している。その中で、申請者は、頭頸部扁平上皮癌患者の臨床検体から頭頸部扁平上皮癌マイクロRNA発現プロファイルを作成し、癌抑制型マイクロRNAの探索を継続してきた。そのマイクロRNAが制御する遺伝子の中で、癌細胞の転移に深く関与しているとされるインテグリンシグナル関連遺伝子に着目し、研究の対象とした。 具体的には頭頸部扁平上皮癌において、発現抑制されていたmiRNA-150-5p、miR-150-3p、miR-199ファミリー、miR-29ファミリーが癌抑制型マイクロRNAである事を証明した。そして、それらマイクロRNAが制御する遺伝子の中に、インテグリンシグナル関連遺伝子が存在する事を確認し、その遺伝子の機能解析を行なった。さらに、遺伝子のノックダウンが頭頸部扁平上皮癌細胞のシグナル伝達経路を阻害する事を明らかにした。また、in silicoでの大規模データベースを用いて、頭頸部扁平上皮癌患者における予後解析を行なった。その結果、解析したインテグリン関連遺伝子の高発現群は低発現群に比べて、有意に予後不良であることが明らかとなった。これら研究成果から、頭頸部扁平上皮癌におけるインテグリン関連遺伝子の重要性が証明され、将来の新たな治療標的となる可能性が示唆された。 申請者は、マイクロRNAを起点としたが癌分子ネットワーク解析が、頭頸部扁平上皮癌転移促進機構の一端を明らかにしたと考えている。さらなる研究の継続は、本疾患の分子メカニズムの理解と、最適な治療選択や新たな治療法の開発に寄与できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は申請した研究計画に沿った研究を進め、具体的な研究成果を上げている。その成果は国際的な論文に掲載されており、研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
申請者はこれまでの研究成果から、頭頸部扁平上皮癌の治療標的としてのインテグリン関連遺伝子に着目してきた。そこで、今後はインテグリン関連遺伝子を阻害する実験系を確立し、研究を推進していく予定である。インテグリンシグナルを阻害する新規薬剤の開発は現実的ではないと考え、既存の分子標的薬や中和抗体を用いた実験系を検討している。 また、申請者の作成した頭頸部扁平上皮癌マイクロRNA発現プロファイルには、まだ解析の行われていない多くのマイクロRNAが存在している。これまで行なってきた研究と同様に、マイクロRNAを起点とした新たな癌分子ネットワークの解明が期待できると考えら、研究の継続が必要と考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた物品購入に関しては、前年度の購入物品や他の助成金の使用により、抑えることができた。 近年、論文の投稿費用の値上がりなどにより、論文の作成、投稿に必要な経費が増加している。次年度の使用計画として、当初に予定していた実験物品購入の他にも、論文の作成費用、投稿費用などにも使用することとなる。
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