研究課題/領域番号 |
17K16897
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
佐々木 崇暢 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (30793070)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 認知症 / 認知機能低下 / オープンエッセンス / 嗅覚障害 |
研究実績の概要 |
高齢者人口が増加の一途をたどる本邦において、アルツハイマー病(AD)を主とした認知症のスクリーニング法の開発は喫緊の課題である。ADやパーキンソン病などの認知症を呈する神経変性疾患では早期から嗅覚障害がみられることが知られている。本研究の目的は、ADの各病期における嗅覚障害を解析することで、嗅覚検査がADスクリーニングとして利用できるか検証することである。 現在までにAD症例を対象にT&Tオルファクトメーターによる一側性嗅覚検査およびAD早期画像診断支援ソフトであるVSRADを用いた内側側頭葉萎縮を解析し、その 結果、内側側頭葉萎縮に有意な左右差を認め、嗅覚障害に関しては有意差まではないものの、左右差がみられる傾向が示された。 現在は健常高齢者を対象とし、12種類の嗅素を用いたカード型嗅覚同定能力測定用カードキット(オープンエッセンス)を用いた嗅覚検査を行なっている。456 例の解析から、加齢に伴い嗅覚が低下すること、女性は男性に比べ嗅覚が保たれていること、高齢者では嗅覚の主観的評価と客観的評価に乖離がみられる傾向が示された。また、嗅素毎の検討では、墨汁、材木、メントール、練乳の4嗅素は認知機能により有意な差がみられ、嗅覚検査による認知症スクリーニングの可能性が示唆された。 今後は高齢者の嗅覚を長期間フォローすることで、AD発症群、非発症群における嗅覚低下の差異を検討し、非侵襲的かつ簡便な嗅覚検査がADスクリーニング の新たなバイオマーカーとして有用か検証していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
疫学研究において高齢者の嗅覚と認知機能の推移を観察しているが、症例数がすくないこと、また嗅覚、認知機能の変化に時間を要することからアルツハイマー病や認知症に移行する症例の有用なデータが得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
嗅覚検査を施行した群を長期間経過観察し、アルツハイマー病を発症する群の嗅覚の推移を把握する。また、嗅覚のみならず、ApoE4や脳MRI、聴力検査などを総合的に評価し、認知症スクリーニング法の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定よりもOpen Essenceの検査回数が少なく、新規購入費用が不要だったため。
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