研究実績の概要 |
フラビン蛋白はミトコンドリアの電子伝達系に介在し、神経活動によって細胞内酸素代謝が亢進し参加されると、青色励起光を照射することにより緑色の自家蛍光を発する特徴がある。またマウスの頭蓋骨は薄く透明なため、骨を除去することなく経頭蓋的に脳表の観察が可能であり、低侵襲に神経活動を可視化できる。本研究では、フラビン蛋白蛍光法を用いたマウス大脳皮質味覚野の同定と可塑性変化を捉えることを目的とした。 C56BL/6Nマウスをウレタン麻酔し、呼吸を安定させるために気管切開を行い、自発呼吸下で急性実験を行った。味覚野を同定するために初回刺激としてアイソレイターを用いて電気刺激によるフラビン蛋白蛍光反応を確認した。マウスの舌表面に100μA、300μA、900μA (10Hz, 10pulses)の電気刺激をそれぞれ与えた。結果、過去の報告と一致した中大脳動脈の周囲に蛍光反応を捉えることができた。また100μAでは反応はなく、300μA、900μAで反応を捉え、強度依存性を認めた。 次に甘味刺激、苦味刺激、蒸留水による蛍光反応を確認した。刺激方法は各刺激を舌へ手動によって滴下した。蒸留水(無味刺激)では反応は認めず、甘味と苦味で反応の強度の違いを認め味覚野を同定した。しかしながら味覚MAPの同定まで至っていない。また遺伝子改変マウスであるGCaMPマウスを導入した。GCaMPマウスはフラビン蛋白蛍光の数倍の強度でイメージングが可能と報告さている。実際GCaMPマウスに対して刺激を行い、同様の位置に反応の増強が認められた。 これまで手動による滴下刺激で対応したが、より正確なデータを捉えるための刺激方法としてONとOFFがはっきりさせ、繰り返し刺激を行う必要がある。現在外部トリガーからシリンジポンプを使用して任意のタイミングで味覚水、蒸留水を滴下することが可能となった。今後これらを用いて大脳皮質味覚野の可塑性変化を捉える研究を進めていく。
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