研究課題/領域番号 |
17K16899
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
上野 春菜 金沢大学, 附属病院, 医員 (80792598)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 頭頸部癌 / PDX |
研究実績の概要 |
【研究の目的】本研究は実際の頭頸部癌患者の腫瘍組織を免疫不全マウスに移植したPatient-derived xenograft(PDX)モデルのpreclinical modelとしての有用性を検証することを目的とする。 【対象と方法】2015年12月~2017年9月に本研究参加同意のえられた25名の頭頸部がん患者の腫瘍組織をNOD-SCIDマウスへ移植した。移植した腫瘍が1000mm3程度に増大した場合、犠牲死の上腫瘍を摘出した。摘出腫瘍はHE染色像で組織型・分化度について患者腫瘍との相同性を確認できた場合、「生着」とした。摘出腫瘍は、5代目まで別のマウスへ継代した。患者腫瘍とPDXの組織型・分化度についてHE染色で評価した。また患者腫瘍とPDXのEGFR・p53発現について免疫組織学的に評価した。 【結果】生着率は全症例で5/25(20%)、手術症例で5/18(28%)、生検症例で0/7(0%)であった。生着症例は下咽頭癌2例、舌癌1例、喉頭癌1例、副鼻腔癌1例の5例であった。手術検体断端陽性、術後CCRTが実施された症例に有意に生着がえられた(P<0.05)。平均年齢、性別、喫煙習慣、検体の部位(原発or転移リンパ節)、組織型(SCCorSCC以外)、TNM、ステージでは患者背景と生着の有無に有意差を認めなかった。HE染色像では患者腫瘍とPDX において5例全例で組織型・分化度が一致した。IHC像(EGFR・p53発現)を検討したところ、患者腫瘍とPDXにおいて5例全例でEGFR発現が相似し、4例でp53発現が相似した。舌癌PDXにおいて患者腫瘍と比較してp53発現の増強を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
頭頸部癌PDXモデル5例について患者腫瘍の組織型・分化度が一致し、免疫組織学的にもおおむねタンパク発現強度などが相似した点については、過去のPDXに関する報告と一致した。しかしながら過去の報告と比較すると、やや生着率が低い結果となっている。腫瘍移植時の手技の見直しやより免疫不全の程度の高いNSGマウスへの変更についても検討しつつ、今後も継続可能な研究課題であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は実際の患者とPDXモデルのシスプラチンの奏功性の相関について検討し、頭頸部癌PDXの臨床モデルとしての有用性を検証する予定である。また抗癌剤等の薬剤を細胞の中から外へ排出する膜タンパクであるABC-transporter発現PDXモデルを作成して、抗癌剤投与によるタンパク発現変化や薬剤耐性への影響を評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費に想定以上に支出があったため、前倒し請求をさせていただき補填したが、28495円分残金がでてしまった。次年度の物品費・旅費にあてるつもりである。
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