研究実績の概要 |
【目的】従来はヒト頭頸部癌から樹立された細胞株(Cell line)を移植したCell line-derived xenograft(CDX)モデルを用いて、新規バイオマーカー探索や新薬開発における薬剤感受性試験などの研究が広く行われてきた。しかし頭頸部癌CDXモデルは癌のheterogeneityが失われており実際の頭頸部癌患者の臨床モデルとしては不完全であるという欠点を抱えていた。このような欠点を克服しうるモデルとして実際の癌患者の腫瘍組織を免疫不全マウスに移植したPatient-derived xenograft(PDX)モデルを用いた研究が近年国内外で行われるようになりつつある。本研究の目的は頭頸部癌PDXの有用性を検証することである。 【方法】実際の頭頸部癌患者とPDXモデルでのシスプラチンの薬剤感受性の相関や薬剤耐性にかかわるとされるABC-トランスポーター(MDR-1, MRP-2)の発現の腫瘍の継代や薬剤投与による変化について検討した。 【結果】頭頸部癌PDXモデル5例(下咽頭癌2例、舌癌1例、喉頭癌1例、副鼻腔癌1例)を確立した。患者とPDXで組織型や免疫染色像は相似した。術後シスプラチン併用放射線化学療法ののち、①6か月以降に再発またはCR維持の症例をCisplatin responder群、②6か月以内に再発した症例をCisplatin non-responder群にわけて、①から下咽頭癌PDXモデル1例(P-3)、副鼻腔癌1例(P-5)、②から下咽頭癌PDXモデル1例(P-2)に対して薬剤感受性試験を行ったところ、患者腫瘍とPDXでCisplatinの腫瘍縮小効果に相関がみられた。ABC-トランスポーターの発現は継代では発現変化はみられなかったが、抗癌剤投与 でABC-トランスポーターの発現が増強するものもみられた。 【結論】頭頸部癌PDXモデルは実際の癌患者の性質に相似する。頭頸部癌PDXモデルを新薬開発分野やバイオマーカー探索モデルとして活用をすすめたい。
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