研究課題
平成30年度は前年度までに引き続き、日本人難聴患者DNAデータベースより原因遺伝子が特定できていない優性遺伝形式をとる遺伝性難聴家系の患者のパネル解析を行った。具体的には、 Ion AmpliSeq Designerを用いて、過去に難聴関連遺伝子として報告のある148遺伝子のエクソン領域を増幅するプライマーセットを設計する。AmpliSeqを用いたマルチプレックスPCR法により難聴 の原因遺伝子の全エクソン領域を増幅し、エマルジョンPCR を行ってビーズを調整し、 IonProtonシステムを用いて次世代シークエンス解析を行った。また、前年度同様、優性遺伝形式をとる遺伝性難聴の中で高頻度に見出されるKCNQ4のc.211delC変異は次世代シーケンスにて検出されないため、Taqman法を用いて変異の解析を 行った。また、家系図からは母系遺伝と優性遺伝形式の判別がつきにくい場合もあるため、ミトコンドリア遺伝子変異(mit1555A>G、mit3243A>G)の解析もインベーダー法を用いて行っている。その結果、約40%の症例で原因遺伝子変異を同定することができた。原因遺伝子変異が同定された遺伝子には、TMC1遺伝子など日本人難聴患者では報告の無い原因遺伝子変異も見られた。 また、日本人難聴患者2550例を対象にOTOF遺伝子変異のピックアップと直接シークエンス法による変異の確認を進めた。その結果、39例にOTOF遺伝子の変異を見出し、日本人難聴患者における頻度が1.7%であることを明らかにした。39例のうち31例は高度~重度難聴であり、OTOF遺伝子変異による難聴の聴力像の典型例が高度~重度難聴であることを東kにした。また、得られた成果を論文として取りまとめて報告を行った。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、優性遺伝形式をとる難聴の原因遺伝子解析を行い変異の種類と頻度を明らかにすることができた。
平成31年度は、前年度までに実施した次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子解析のデータ解析をさらに症例数を増やして行う。また、見出された遺伝子変異に関しては、シークエンスエラーの可能性があるため、従来の直接シークエンス法を用いた確認作業を行い変異の確認を行う。直接シーク エンス法により遺伝子変異が確認された場合には、家系内のサンプルの遺伝子解析を行い、遺伝形式と矛盾が無いことを確かめる。難聴の原因遺伝子変異の種類ごとに、難聴の程度、難聴の型、めまいなどの症状の有無 などの臨床像をとりまとめ詳細に検討を行う事により、遺伝子型と表現型の相関に関してその特徴を明らかにする。以上の研究の成果を取りまとめ論文として報告する。
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PLoS One.
巻: 14 ページ: e0215932
doi: 10.1371/journal.pone.0215932.