研究課題/領域番号 |
17K16902
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
大橋 敏充 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教 (80707860)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 頭頸部癌 / 腫瘍免疫 / 機能イメージング |
研究実績の概要 |
低酸素や乳酸濃度を評価する機能イメージングを用いて、免疫抑制状態の予測が可能であるか検討しようと考えている。 低酸素イメージングとして、PAI(Photoacoustic imaging)での検討を予定していた。いくつかの企業や革新的研究開発促進プログラムImPACTの担当者と相談したが、PAI機器の使用の目途が立たず、ドップラーエコーを低酸素の指標として用いることにした。また、乳酸濃度イメージングとして、FDG-PET/CT、MRスペクトロスコピー(MRS)の使用を検討していた。MRSを頭頸部癌に用いるのには技術的・時間的な制約が多く、今回の研究はFDG-PET/CTのみを行うこととした。 現在、当院で治療を行う頭頸部癌患者に対し、治療前にドップラーエコー、FDG-PET/CTを行いデータの蓄積を行っている。また、FDG-PET/CTパラメーターは、施設によって誤差があり、その誤差計算をできるようなシステムづくりを行ってきた。それに並行し、手術検体から、組織を採取し、mRNA、タンパク解析、乳酸値の計測は継続しておこなっている。 過去に当科で治療を行った進行頭頸部癌患者のデータ解析および手術標本の染色をおこなった。FDG-PET/CTパラメーター: SUVmax、SUV平均値(SUVmean)を乳酸濃度の指標として計測した。免疫状態の指標として、腫瘍に浸潤したマクロファージ(CD68)、免疫抑制性マクロファージ(CD163)を免疫組織化学染色(IHC)し発現を解析した。CD163/CD63発現比は、SUVmaxと正の相関関係を認め、SUVmeanとも同様の傾向を認めた。この結果は、FDG-PET/CTで免疫抑制性マクロファージは腫瘍内で増加していることを予想できる可能性が示唆されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PAI、MRSの使用を検討していたが、ともに使用することが叶わなかった。PAIの代わりにドップラーエコーを使用することに決定したが、まだ計測した症例数に限りがあり、ドップラーエコーが実際に低酸素マーカーと関連性を認められるのかという検討には至っていない。FDG-PET/CTに関しても、他施設でFDG-PET/CTを行った検体も、当院で行った検体と同様に、研究対象に含めることができるようなシステム作りを行ってきた。同様にまだ症例数に限りがあり、乳酸濃度とFDG-PET/CTパラメーターに関連性を示すような結果には至っていない。 当科の人員が減少したことにより、当初想定していたより、大学病院での臨床をしなければならない時間が増加した。研究に割り当てる時間が削減されたのも大きく影響していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
時間とともに、検体、データの数が増えていくはずである。ある程度蓄積されたところで、まずは、ドップラーエコーと低酸素マーカー、FDG-PET/CTパラメーターと乳酸濃度との関連性を検討し、それら機能イメージングが有効であることを示したいと考えている。そのうえで、免疫状態の評価も行い、それら機能イメージングの結果と、腫瘍微小環境における免疫状態との関連性を示すデータを示していきたいと考えている。 また、2018年4月から当科の人員も増加するので、研究に割り当てられる時間も増えることが見込まれる。
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次年度使用額が生じた理由 |
最も大きな理由は、研究の進捗状況がやや遅れていることに原因があると思われる。来年度にはある程度の症例数が蓄積されると予想されるので、検体を用いて低酸素・乳酸にかかわる因子の測定、免疫状態の評価をしていく予定である。その過程で、多くの物品が必要になっていくものと考えている。 また来年度は、学会(国際学会を含む)に積極的に参加し、研究成果を発表していきたいと考えているので、旅費の計上が当初の計画より多くなるものと予想している。
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