がんは通常の組織とは異なり、内部は低酸素状態であり、またがん細胞の解糖系亢進を反映して乳酸濃度が高くなっている。以前我々は、低酸素や乳酸などの因子が、微小環境における免疫抑制誘導因子として作用していることを明らかにしてきた。非侵襲的に微小環境の免疫状態を画像的に評価する方法は臨床的に用いられていない。そこで、低酸素やがん細胞の解糖系亢を機能イメージングで評価することで、がん微小環境の免疫抑制状態の予測が可能であるか検討をおこなっている。 FDG-PET/CTはがん組織の解糖系亢進を反映している。当院で治療を行った頭頸部癌患者の検討で、FDG-PET/CTパラメーターであるSUVmax、SUVmeanなどは、末梢血中の好中球数、CRPと正の相関を認めた。がんにおける慢性炎症は、がん免疫抑制に繋がる。さらに、SUVmax、SUVmeanはがん組織に浸潤する免疫抑制性マクロファージ極性化とも正の相関を認めた。つまり、実際の患者でも、解糖系が亢進した頭頸部癌ほど、免疫抑制状態が誘導されていることが示唆された。一方で、がん細胞のPD-L1発現に関しては、PD-L1低発現群・高発現群と比べると、中等度発現群が有意にSUVmax、SUVmeanが低値であった。この結果に関しては解釈が難しく、さらなる検討が必要と考えている。 低酸素イメージングとして、ドップラーエコーによる頭頸部癌患者の転移リンパ節の血流評価を行った。血流の少ない転移リンパ節では、マクロファージ浸潤が有意に少なかった。この結果は、当初の仮定とは全く逆であった。評価対象が、もともとマクロファージが多数存在する転移リンパ節としたことで、免疫細胞浸潤に別の要因が加わった可能性が否定できない。今後は、原発の低酸素イメージングの方法を考え、原発での評価を考えていきたい。
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