研究課題
DNAメチル化などの可逆的な塩基修飾が、癌化機構など生物に多様な影響を与えていることが解明されてきている。当教室でも頭頸部癌領域のがん抑制遺伝子におけるDNAメチル化が癌化機構に関連しており、臨床的に予後不良であることを示してきた。RNAにもアデノシン6位窒素原子へのメチル基の付加反応(m6A)という塩基修飾が、DNAよりも動的に存在していることを受けて、癌とメチル化についてRNAでも研究をすることを主題として申請していた。2018-2019年度で、RNA ELISAで手術検体44症例の癌部正常部におけるm6A量を検討を行った。まず癌部、正常部のトータルRNAを抽出した。エライザに類似した方法(蛍光法)、Relative Quantification法で、トータルRNA中のm6Aを%で計測した。結果は、m6Aが癌部で正常部より有意に増加していた(P=0.004)。AUROC値は、0.6658であった。m6A比=癌部m6A(%)/正常部m6A(%)と定義し、m6A比1.5以上(癌部でm6Aが多い群)と、m6A比1.5未満(癌部でm6Aが少ない)群で臨床情報と比較した。年齢、性別、喫煙歴、飲酒歴、TNM分類、HPVに高m6A群と低m6A群に有意差を認めなかった。予後解析では、ログランクテストで、高m6A群が低m6A群と比べ有意に予後不良であった(P=0.030)。コックス比例ハザード分析では、年齢(>65 vs <65)、性別、喫煙歴、飲酒歴、TNMステージと比較した。高m6A群が低m6A群と比べ有意に予後不良であった(P=0.017)。2020年度は、RNAメチル化メチルトランスフェラーゼであるMETTL3遺伝子を頭頸部細胞株でノックダウンを施行し、癌細胞増殖性の評価ならびに臨床検体によるMETTL3遺伝子発現とm6A値の比較検討を行った。現在、解析を行っている。最終報告で報告する予定である。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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