研究実績の概要 |
研究初年度は、同意を得た中咽頭癌患者5例から組織サンプル(生検または手術)と末梢血10mlを採取した。組織サンプルからp16免疫染色とTaKaRa PCR Human Papillomavirus Typing Set によるHPV解析をおこなったところ, 全例HPV関連癌であった。末梢血から血漿を分離して、QIAamp DNA Mini Kit(Qiagen, Valencia, CA)を用いてDNAを抽出した。微量であるためにまずDNA量のみを測定した。DNA量は検出可能であった。治療後も経時的(3ヵ月毎)にリキッドバイオプシーをおこなった。経時的な推移を確認できたものは3例、治療内訳は①手術→術後化学療法併用放射線治療, ②手術単独治療, ③化学療法併用放射線治療であった。①は術後低下したが、術後化学療法併用放射線療法終了後に増加してきた。②は手術直後にやや増加したが、経過中に治療前の量に戻った。③は化学療法併用放射線療法後に増加した。全例で再発は認めていない。治療方法が異なるために現段階では傾向は明らかではなく,症例の蓄積が必要であると考えた。 研究2年目は、HPV関連中咽頭癌患者のリキッドバイオプシーサンプルを5名の患者さんから収集した。血漿からDNAを抽出し濃度を測定し、cell free DNAを使ってHPVのPCRを行った。腫瘍がHPVポジティブの症例でも、血漿からはポジティブの症例、ネガティブの症例が存在することがわかった。つまり、腫瘍からのcell free DNAの中にHPVが存在するかどうかで、予後と関連する可能性があると予想された。今後はサンプルDNAにバイサルファイト処理をおこない,メチル化されている塩基を特異的にPCR増幅してメチル化の解析をおこなう。シーケンス間と組織・血液間でのメチル化の相違性を検討する。E-cadherin, TAC1, GALR1, COL1A2遺伝子を解析する予定である。
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