研究課題
ラット声帯上皮細胞の培養モデルの確立を試みた。ラットの喉頭の大きさは1cm、声帯粘膜の長さは2mm程度と微小であるため、ラットの声帯からの上皮細胞を採取する際には手術用ルーペや顕微鏡を用い、さらに上皮と粘膜固有層の分離する試薬(Dispase II)を用いることで、他組織の混入を最小限とした。また細胞増殖を促進するため、声帯上皮細胞をフィーダー細胞と共培養した。これらのことにより、培養開始7日後には敷石状の細胞集塊をフィーダー細胞間に認め、声帯上皮細胞が生着・増殖したものと考えられた。以上のことから、小動物であるラットからも声帯上皮を採取し、上皮細胞を初代培養できることが示唆された。今後この細胞の特性を免疫組織化学検査やPCR検査により検討するとともに、増殖・継代の条件を検討していく予定である。一方で、声帯上皮バリア機構における重要な分子の検討を行った。細胞間結合の中でもタイトジャンクションはバリア機構において重要な役割を担う。このタイトジャンクションにおける内在性膜タンパク質であるクローディンの喉頭における発現の検討を行った。ラット声帯粘膜を用いたRT-PCRにより、クローディンの各サブタイプの中でクローディン-1、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-10、-11、-12、-17、-22、-23の遺伝子がラット声帯粘膜に発現していることを確認した。さらに免疫染色では、声帯上皮の最も管腔側の細胞間にクローディン-3の強いシグナル、またより深層の細胞間にクローディン-3、-4、-7のシグナルを確認した。以上のことからクローディン-3がラット声帯上皮において最も頂端側の細胞間に分布するタイトジャンクションの構成要素であり、細胞間隙をシールする役割を担っている可能性が考えられた。以上のことは、声帯の恒常性維持機構の解明に将来繋がる可能性があると考えられる。
3: やや遅れている
ラット声帯粘膜は微小であるため、上皮採取の操作が容易ではなく、また採取できたとしても採取される細胞量が少ないため、その細胞を培養皿上に生着・増殖させることは容易ではなかった。現時点で上皮細胞様の細胞塊を確認できているものの、それをさらに増殖させ継代させるには、培養方法の改良が必要と考えられる。このため当初の計画よりも現在はやや遅れていると考えられる。
今後は培養液やフィーダー細胞の交換時期の細かい点を検討していく。それでも細胞増殖や生着に問題がある場合には、同じ非角化型重層扁平上皮である食道や角膜などの上皮細胞培養法の報告を再検討し、培養プロトコルの改善を行う。
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