研究課題/領域番号 |
17K16909
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
水田 匡信 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (20777875)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 声帯上皮細胞 / 分離培養 / タイトジャンクション / バリア機能 |
研究実績の概要 |
ラット声帯上皮細胞の培養モデルの確立を行った。ラットの喉頭の大きさは1cm、声帯粘膜の長さは2mm程度と微小であるため、ラットの声帯からの上皮細胞を採取する際には手術用ルーペや顕微鏡を用い、さらに上皮と粘膜固有層を分離する試薬(Dispase II)を用いることで、他組織の混入を最小限とした。また細胞増殖を促進するため、声帯上皮細胞をフィーダー細胞と共培養した。これにより初代培養開始3日後には敷石状の細胞骨格を有する細胞集塊が確認された。さらに、培養開始9日後の細胞集塊を用いて形態的・免疫組織化学的評価を行ったところ、電子顕微鏡検査にて細胞間の頂端側(apical側)にタイトジャンクションの存在が確認され、免疫組織化学検査では細胞間にoccludinおよびZO-1、そしてclaudin-3, -4及び-5の発現が確認された。初代培養開始9~13日後には12-well細胞皿においてコンフルエントまで細胞は増殖し、1ラットあたり15×104個の上皮細胞が獲得された。 さらに初代培養後の声帯上皮細胞をコラーゲンコートされたセルカルチャーインサートに継代培養させ、電子顕微鏡により観察すると細胞集塊は3層構造を成していることが確認され、さらに免疫組織化学検査において細胞間にはZO-1が発現していることが確認された。また上皮細胞のバリア機能の評価目的にtransepithelial electrical resistance(以下TEER)の計測を行ったところ、継代4日後にTEERの急上昇を認め, その後は2000Ω*cm2前後で推移し、培養上皮細胞集塊のバリア機能が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラット声帯粘膜は微小であるため、声帯上皮を採取しても上皮細胞を生着・増殖させることは容易ではなかった。このため安定した培養条件の検討のため1年目(平成29年度)には研究の遅れが生じたものの、2年目(平成30年度)には培養条件の改良により安定したラット声帯上皮の分離培養が可能となり、またその形態的・機能的な検討を行うことができた。当初2年目(平成30年度)に予定していた声帯上皮バリア機構の傷害・修復過程の解析を平成31年度には計画しており、全体として研究の進捗はやや遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこの2年間で確立したin vitroモデルを用いて声帯上皮バリア機構の傷害・修復過程の解析を行う。臨床的に喫煙や物理的ストレスは声帯病変のリスク因子であることが推測されており、これらによる声帯上皮傷害モデルの確立を試みる。その傷害分子の候補としてはcigarette smoke condensateや二次的に発生する活性酸素があげられる。これらにより培養された声帯上皮細胞群の形態および機能が変化するかを電子顕微鏡検査、TEERなどにより解析し、傷害が確認されればその修復過程の解析も行う。
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