研究実績の概要 |
前年度までに確立した、ラット声帯上皮細胞から作製した細胞シートを用いて、その傷害からの修復過程を検討した。 ラットの喉頭を採取し, 酵素処理を行って声帯上皮細胞の分離した後、プレート上で単培養を行った。80-90パーセントコンフルエントに達した後、声帯上皮細胞を、コラーゲンコートされたセルカルチャーインサートに継代した。pH4で2㎎/mlのペプシンをインサートの内部に加えて5分間傷害した後, インサート内部の培地を通常の培地に交換し細胞の修復を観察した。修復過程を評価するために、培地交換後のtransepithelial electrical resistance(以下TEER)の推移を評価し, 電子顕微鏡による観察で細胞表面の傷害を観察した。 短時間の傷害でTEERは低下したが, 時間経過とともにTEERは改善し24時間以内に元の数値まで回復することが確認された。傷害後に死細胞の有意な増加は認めず, 細胞密度の低下も認めなかった。細胞死に至るほどの大きな傷害はなかったが, 傷害に伴い密着結合が緩み透過性が亢進した可能性が考えられた。電子顕微鏡による細胞表面の観察では傷害前は微小突起が観察できた。ペプシンによる傷害を受けると細胞表面の微小突起が変形したが、こちらも時間経過とともに回復した。 声帯上皮細胞を用いたIn vitroモデルを作製した。このモデルを用いることでvivoの実験系では評価が難しかった声帯上皮の酸による傷害からの修復過程の評価を行うことができた。
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