研究課題/領域番号 |
17K16910
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 亮介 京都大学, 医学研究科, 研究員 (40736708)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 気管 / 軟骨 / コラーゲン / ヘパリン |
研究実績の概要 |
当講座では再生誘導型の人工気管を臨床に使用してきた。この人工気管は上皮および間質の再生を誘導するものの、気管軟骨の再生は誘導できないため、気管の枠組み保持には非吸収性のプラスチックを用いてきた。軟骨成長過程の小児への使用を開始するために、軟骨組織を有する人工気管開発が求められる。動物実験では自家軟骨細胞移植により、人工気管内に軟骨組織を形成させることに成功したが軟骨細胞の定着率は悪く、軟骨細胞が他組織の再生を阻害するという副作用も見られた。軟骨細胞由来の血管新生阻害因子が一因と考えられるため、本研究では軟骨細胞由来因子の拡散防止が可能な人工気管開発を目指す。動物実験レベルで、上皮、間質、軟骨などから成る複合組織としての気管再生を達成する。 ウサギ肋軟骨細胞をコラーゲンスポンジの一部分に播種し、その周囲にヘパリンを結合させた。培養環境でウサギ肋軟骨細胞は生存可能であることを確認した。ウサギ肋軟骨細胞を埋め込んだヘパリン結合スポンジを動物の皮下に移植し、軟骨細胞の生存や血管新生を組織学的手法により評価したところ、軟骨組織に特徴的なECM成分であるII型コラーゲンが免疫染色により検出され、軟骨細胞周囲には血管新生が確認された。 当初は培養系でヒト軟骨細胞を用いて詳細な評価も実施する予定であったが、細胞や培地の提供元に問題が生じたため、平成30年度以降に実施する予定である。また、気管再建実験をおこなうため、軟骨細胞を含むヘパリン結合スポンジの形状変更、補強等の方法を今後検討し、気管への移植に適したグラフトを作製する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヘパリンを結合させたコラーゲンスポンジ(ヘパリン結合スポンジ)を作製した。ウサギ肋軟骨から採取した軟骨細胞を培養したところ、細胞の生存が確認された。コラーゲンスポンジの一部に肋軟骨細胞を播種した後、ヘパリン溶液と反応させ、肋軟骨細胞周囲のコラーゲンスポンジにヘパリンが結合したグラフトを作製した。これを肋軟骨細胞を採取したウサギの皮下へと移植し、軟骨組織形成および血管新生を組織学的に評価したところ、II型コラーゲン陽性の軟骨細胞が観察され、また、その周囲にはCD31陽性の血管が観察された。したがって、同様のグラフトを気管への移植材として用いた場合においても、軟骨細胞の定着と血管新生誘導が達成できる可能性があると推察された。 培養系での試験にはヒト由来の細胞を用いる予定であったが、細胞供給が遅れたこと、また、推奨される培地の供給が長期的に停止されたたことにより、培養条件の検討に時間を要している。 気管への移植に用いる円筒形の枠組みとしてポリ乳酸を考慮していたが、喉頭・気管の枠組み代替物として移植したポリ乳酸スキャフォールドを組織へ定着させるにはかなりの工夫が必要であることが、当科での他の研究により示唆されたため、より好ましい材料について検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト由来の軟骨細胞、血管内皮細胞を用いた実験を行う。ヘパリン結合コラーゲンスポンジを用いることで、培養軟骨細胞由来血管新生阻害因子による培養血管内皮細胞の生育阻害が緩和されるかに関して調べる。 移植用グラフトとして、移植後も円筒形を維持することができるようにヘパリン結合コラーゲンスポンジの形状修正と補強を検討する予定である。ポリ乳酸以外の生分解性プラスチックや、高い強度を有するコラーゲンスキャフォールドとヘパリンコラーゲンスポンジを複合させることで達成する予定である。 最終的には、ヘパリン結合コラーゲンスポンジをベースとした移植用グラフトへ自家軟骨細胞を含ませ、気管欠損へと移植し、気管再生への効果を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ポリ乳酸を用いたスキャフォールド作製が不要と判断されたため。
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