研究課題/領域番号 |
17K16921
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
橋本 和樹 九州大学, 大学病院, 助教 (20707195)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 唾液腺癌 / 浸潤転移 / 受容体型チロシンキナーゼ / 分子標的治療 / 免疫チェックポイント阻害薬 |
研究実績の概要 |
唾液腺癌は比較的まれな腫瘍であるが非常に多彩な組織型によって構成されるため,その病態は十分には解明されていない。治療の第一選択は手術療法であるが,特に高悪性度の組織型においては高頻度に転移・再発を来し,生命予後を大きく左右する。にもかかわらず,唾液腺癌の進展や転移に関与する分子機構の解明は未だ不十分であり,遠隔転移例に対する有効な化学療法レジメンも存在しないのが現状である。本研究では,唾液腺癌(特に高悪性度組織型)における受容体型チロシンキナーゼ(HER2, EGFR)などの発現異常に注目し,唾液腺癌の浸潤・転移に寄与する分子メカニズムの解明を目指すとともに,分子標的薬を中心とした新たな個別化治療の導入へとつながる病理学的知見の集積を目的とする。 これまでの研究では,高悪性度の唾液腺癌組織型である唾液腺導管癌や多形腺腫由来癌において,受容体型チロシンキナーゼであるHER2蛋白の過剰発現・遺伝子増幅,ならびにアンドロゲン受容体(AR)の高発現が認められ,唾液腺癌における浸潤・転移への関与,また将来的な治療標的分子としての可能性が示唆された。また,抗EGFR阻害薬,抗PD-1抗体薬といった頭頸部癌に対する新たな薬物療法を実際に行った唾液腺癌症例において,EGFR発現,PD-L1発現等を解析することにより,唾液腺癌に対する新規薬物療法の有効性の検証,また効果予測バイオマーカーとしての意義を探る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
対象症例を追加集積中。抗EGFR阻害薬,抗PD-1抗体薬といった頭頸部癌に対する新規薬物療法を実際に施行した唾液腺癌症例をさらに集積し,各バイオマーカーの検索を行っている。 受容体型チロシンキナーゼ蛋白の発現異常に加えて,PD-L1,MSI(マイクロサテライト不安定性)等に関する解析を行っており,病理学的因子,臨床予後との関連を今後検討する予定であるが,これら発現解析の準備に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
収集した症例に対し,HER2,EGFR,PD-L1,またMSI(マイクロサテライト不安定性)等の発現解析を進め,組織型を含めた病理学的因子と,治療効果や臨床予後といった臨床因子との関連を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
唾液腺癌は比較的まれな疾患であり腫瘍組織型も多彩であるため,解析に必要となる各腫瘍組織型の追加症例集積に想定以上の時間を要したため。また,受容体型チロシンキナーゼ蛋白の発現異常に加えて,PD-L1,MSI(マイクロサテライト不安定性)等に関する解析を行っており,病理学的因子,臨床予後との関連を今後検討する予定であるが,これら発現解析の準備に時間を要したため。
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