吃音症は人口の5%に発症する疾患であり、成人になっても人口の1%は吃音をもったまま社会生活を送っている。吃音は連発、伸発、難発(ブロック)の3種類に分かれるが、成人になるにつれブロックが増えることが分かっている。ブロック発生時は、音声だけではなく、呼吸も止まり、発話困難感だけではなく、周囲の無理解な負の反応により、発話に恐怖も覚えてしまう。そのような吃音症に対して、確立された治療法はなく、吃音発生の基礎的データが足りない現状である。そこで、吃音症の発声メカニズムの中での声帯機能を観察するために、喉頭ファイバースコピーと音声情報(フォノグラム)を同時測定するシステムを構築することを本研究で行う。喉頭ファイバースコピーで声門開大・声門閉鎖を確認でき、マウスピースにつながれたフォノグラム機械により、音圧・ピッチ・呼気 流量を抽出する。喉頭ファイバースコピーは従来の耳鼻咽喉科の臨床で使用しているものを使用する。フォノグラムのデータと喉頭ファイバースコピーのデータを統合するのに必要な機材の準備を行った。フォノグラムデータと音声をPowerlabシステムに取り込み、また、喉頭ファイバースコピーの動画と音声をビデオキャプチャーモジュールを通して、パソコンに同時表示させるシステムを構築した。この研究を遂行するための研究計画を九州大学の倫理委員会に提出して、承認を得ている。本システムで吃音者の発話状態を確認すると、ブロック時の声帯の状態は閉鎖している時と、開大している時が発見された。この発見を英語論文にて発表した。
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