研究実績の概要 |
加齢性難聴は加齢に伴い進行する両側性の感音難聴である。コミュニケーション障害をきたすだけでなく、近年の研究により高齢者の認知機能低下にも悪影響を及ぼすことが明らかとなってきている。我が国における急速な人口の高齢化を考慮すると、加齢性難聴は今後ますます深刻な社会問題となってくると考えられるが、その発症メカニズムについても未だ明らかでなく、治療についても確立した方法がないのが現状である。 脱アセチル化酵素であるSirtuinsは細胞の老化及び加齢関連疾患においての極めて重要な役割を担っており、そのSirtuinsの発現はその補酵素であるNAD(nicotinamide adenine dinucleotide)に依存していることが知られている。近年の研究の進展により、NADの中間代謝物質の投与により加齢性変化を改善することができることが“内耳以外のいくつかの臓器”で明らかにされてきている。一方、蝸牛においては、蝸牛内にSirtuinが存在し、それが加齢に伴って低下することは報告されているが、NADの中間代謝物質の投与により蝸牛の加齢性変化が抑制されるかどうかについては未だ不明である。そこで、本研究においては加齢性難聴マウスモデルを用いてこのことを明らかにし、ヒト加齢性難聴の治療法開発の一助となることを目指す。 今回、1ヶ月齢(難聴出現前であることが知られている)と3ヶ月齢の加齢性難聴モデルマウス(C57BL/6マウス)に対して、NMN飼料:30mg、60mg、120mg、240mg /kg/dayおよびNR飼料:60mg、120mg、240mg、400mg /kg/dayをそれぞれ10日間連日投与し、その後、蝸牛におけるNAD、Sirtuins (SIRT1, 2, 3, 4, 5, 6, 7)の発現量をリアルタイムPCR法にて測定し、効率的に蝸牛内のNAD発現を増加できるNMN、NR含有量を決定した。
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