研究実績の概要 |
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤による頭頸部扁平上皮癌に対する抗腫瘍効果のメカニズムを癌細胞の浸潤および遊走に密接な関与がみられるタイト結合分子に焦点を当て解明する。 1. ヒト剖検材料を用いて調べた結果、頭頸部扁平上皮癌においてヒストン脱アセチル化酵素HDAC1, 転写因子p63, タイト結合分子JAM-A, claudin-1の発現が、悪性度とともに増加がみられた。 2.HDAC阻害剤を用いて、咽頭扁平上皮癌細胞株(Detroit562)および初代培養癌細胞に処置して、p63, JAM-A, claudin-1の発現および局在変化を比較検討した。HDAC阻害剤tricostain A(TSA)およびHDAC1特異的阻害剤処置により、p63, JAM-A, claudin-1の発現低下がみられた。 3.HDAC阻害剤を用いて、咽頭扁平上皮癌細胞株(Detroit562)および初代培養癌細胞に処置して、癌細胞の浸潤、遊走および増殖への影響を比較検討した。HDAC阻害剤tricostain A(TSA)および HDAC1特異的阻害剤処置により、癌細胞の浸潤、遊走および増殖の明らかな抑制がみられた。 これらの結果は、HDAC阻害剤、特にHDAC1阻害剤が、頭頸部扁平上皮癌のp63の発現低下を起こし、JAM-A, claudin-1の発現低下をさせ、癌細胞の浸潤および遊走を抑制していると考えられた。
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