研究実績の概要 |
本研究の目的は、iPS細胞から気道上皮細胞へ分化誘導させ、イオンチャネルやトランスポータの阻害剤を添加することで、in vitroで杯細胞過形成モデルの作製を試み、杯細胞過形成の病態メカニズムを解明することである。平成29年度においては、マウスiPS細胞及びラット初代気道上皮細胞を用いて、杯細胞過形成モデルの作製を実施した。 1.マウスiPS細胞を用いた杯細胞過形成モデルの作製 以前、我々はマウスiPS細胞から機能性を有する気道上皮細胞への分化誘導に成功した(Yoshie S et al., Cell and Tissue Research, 2016)。この報告に基づき、iPS細胞から気道上皮細胞へ分化誘導後、タバコ煙水溶液で1週間処理することで杯細胞過形成モデルの作製を行った。 2.初代気道上皮細胞を用いた杯細胞過形成モデルの作製 初代気道上皮細胞をラットの気管から採取し、ALI培養条件下で気道上皮細胞分化誘導培地を用いて成熟した気道上皮細胞へ分化誘導させた。その後、タバコ煙水溶液で1週間処理することで杯細胞過形成モデルの作製を行った。 3.マウスiPS細胞由来杯細胞過形成モデルの評価 上述の方法で作製した杯細胞過形成モデルをリアルタイムRT-PCRによって杯細胞マーカー(Muc5ac, AQP5)、線毛上皮細胞マーカー(Foxj1, Tubb4a)、基底細胞マーカー(Krt5)の発現を調べた。その結果、タバコ煙水溶液で処理した細胞は杯細胞マーカーであるMuc5acとAQP5の発現量がコントロールに比べ上昇し、基底細胞のマーカーであるKrt5の発現量はコントロールに比べ減少した。一方で、線毛上皮細胞のマーカーにおいては発現量に変化がみられなかった。
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